家族が増えると何がどんなふうに「かわっちゃうの?」
「これからは、いろんなことが かわるんだよ」。ある朝早く、お父さんが息子のジョーゼフにこう言って、お母さんを迎えに出かけていきました。たまたまこの絵本を図書館で手に取った私は、あらすじを知りませんでした。しかし、「お母さんを迎えに」「いろんなことがかわる」の2つのキーワードで、ピンときました。そう、今日は、誕生した赤ちゃんとお母さんが、家に帰ってくる日なのです! 留守番を任されたジョーゼフは、何がどんなふうにかわっちゃうのだろうかと、不安でいっぱいです。
周りの物が次々変わり始めた!
そうこうしているうちに、家の中の物が変わり始めました。やかんが何か変だぞ!? と思ったら、次第に猫に変わり始めました。上靴には羽のようなものが生え初め、洗面器は、何だか人の顔のようになってきました! 少し動揺しているようで、淡々とそれらの突拍子もない変化を眺めるジョーゼフ。ぼくはどうしたらいいのかなあと思いながら、外に出て遊び始めますが、外の光景もどんどん変わり始めます。家の中に戻ったジョーゼフの表情は、少しうつろです。家族が増えることによってこれからやってくる未知の変化を、受け止めかねているようにも見えます。変わっちゃうけど、大丈夫!
読み進めながら私の中にまざまざとよみがえってきたのは、妊娠後期になり、赤ちゃんがもうすぐ目の前にやってきてくれるという期待と裏腹に、どんどん不安が増していった気持ちでした。それは、1人目の子の時に限りませんでした。家族が1人増えるということで、生活がどのように変わるのだろう。今まで普通にやってきたことも、大変になるだろう。その変化にうまく対処できるだろうか。上の子に負担をかけないように頑張らなきゃ。そして子どもが増えても上の子たちにもちゃんと対応できるだろうか……。出産予定日が近づくにつれて、正にジョーゼフのように「何がどんなふうに変わるだろうか」というモヤモヤとした気持ちに包まれたものです。この絵本によって自分の不安だった心を描き出されたかのような思いとともに、自分以外の家族も、赤ちゃんを迎える上で様々な不安に包まれていたのかもしれないと、あらためて振り返ることになりました。さて、家の中に戻って自分の部屋に入り、部屋を暗くしたジョーゼフでしたが、お父さんとお母さん、そして赤ちゃんが帰ってきて部屋はパッと明るくなり、いつもの普通の家の中に戻りました。これからジョーゼフには、様々な生活の変化が待ち受けていることでしょう。でも、それらは、ジョーゼフが想像したような突拍子もない変化ではなく、1つ1つが家族みんなで乗り越えていけるものであるはず。お兄ちゃんになったジョーゼフの赤ちゃんを抱っこする姿が、急に頼もしく見え、これからの生活の変化に期待を感じさせてくれます。お兄ちゃん、お姉ちゃんになったばかりのお子さんよりも、お兄ちゃん、お姉ちゃんとして頑張っている少し大きなお子さんと読むのもおすすめしたいです。