新緑と絶景に出会う爽快ハイキング
※2019年9月の台風により倒木が多く発生し、現在鎌倉の山道の多くは立ち入り禁止となっています。また開通の情報が入り次第、こちらにご報告します。
衣張山は、杉本寺や、竹寺・報国寺などのそばにある山。山頂からは、海や山、まちなみを望む絶景が! かつて「かまくら石」を切り出したといわれる石切り場跡、歴史の趣ある石仏などにも出会えます。とても美しい新緑と出会える、5月ごろの散策がおすすめです。
杉本寺前から出発し、竹寺・報国寺前に下りてくる、3時間ほどのハイキングコースです。登りがちょっと大変ですが、山頂で、疲れを吹き飛ばしてくれる爽快な景色が迎えてくれますよ!
歩きやすいハイキングシューズで歩いてくださいね。山道に入ってしまうと売店はないので、飲み物や食べ物を持っていきましょう。山頂でお弁当を食べるなら、9:30~10:00ごろに鎌倉駅から出発するのがおすすめです。
杉本寺前からウオーキング開始
まずは鎌倉駅東口からバスに乗り、杉本観音バス停で下車します。バス邸そばの杉本寺は、奈良時代に開かれたと伝わる、鎌倉で最も古いお寺。昔ながらのわらぶきの山門は、風情があります。開山の行基が彫ったという像をはじめ、3体の観音さまがご本尊。火災のとき、自らスギの木の下に隠れたという言い伝えから、杉本観音の名がついたといわれます。坂東三十三観音霊場の第一番札所にもあたる、由緒あるお寺です。杉本寺前の横断歩道を渡り、川沿いに進んでいきましょう。
これは滑川(なめりがわ)と呼ばれ、旧市内(鎌倉の三方を囲む山並みの内側)で一番長い、全長約5.6kmの川です。川底には石や緑が残り、自然が残る形で整備されています。真っ白なコサギという鳥が、魚を取る様子が見られることもあります。
やがて道標が立っている十字路に出ます。田楽辻子(でんがくずし)といわれる小道です。
かつてこのあたりに、田んぼでの豊作を願って踊る「田楽法師」のすむ屋敷があったといわれています。今は住宅地ですが、かつてこのあたりにも田んぼが広がっていたことをほうふつとさせる道の名です。
そのまま道を曲がらず、まっすぐ進んでいきましょう。次第に上り坂に入ります。道端の緑地には、かわいらしい春の花が咲いています。紫色の細長い花がたくさん伸びているのは、ムラサキケマン。
花の形が、寺院のお堂の中にかけて飾る仏具の華鬘(けまん)に似ていることから名づけられました。
山道で思い切り森林浴
しばらく登ると、やがて山道へ入ります。この辺りは、犬懸谷(いぬかけがやつ)と呼ばれています。昔、狩りのときに猟犬が登ったり下りたりして駆け回っていたのでつけられた地名だそう。すがすがしい杉木立は、まるでシダの王国。丘陵に降った水が谷あいからしみだした「しぼり水」のために谷底は湿りがち。谷戸の多い鎌倉には谷戸底の湿った環境も多くシダの種類も豊富で、シダ好きの方にはたまらない魅力的な場所なのだそう。
次第に登り坂に入ります。思い切り森林浴をしつつ、木の階段を登っていきましょう。一気に急坂を登るので、あたりの自然を楽しみながら、ゆっくりと。5月なら、「ピールーリー、ジジッ」というオオルリの涼やかな声が聞こえてくるかもしれません。
途中、大きな岩の陰に、2人で寄り添う道祖神のような、小さな石の像があります。
この辺りは、かつて、石段や石塔などに用いられた「かまくら石」を切り出す石切り場だったところ。石への信仰や人々の想いをほうふつとさせるたたずまいです。
さらに登ると、道が2手に分かれます。山頂付近でまた合流するのですが、見どころを訪れたい方は、左の方へ進みましょう。道の脇に、五輪塔と呼ばれる、5つの石を積み上げた石塔が並んでいます。
中世の武士のお墓などによく用いられた形式で、石は上から空・風・火・水・土を表すといわれます。命が尽きると自然に返る……そんな世界観が感じられる石塔です。
人々の暮らしを支えた かまくら石の石切り場跡
やがて、道の脇に大きな洞穴がぽっかりと口を開けているところに出ます。ここは、石切り場跡といわれています。壁面にはノミの跡が残っており、かつて人々が石を切り出していた様子がしのばれます。かまくら石は、火山灰と、海の底に堆積した砂などが交互に積もってできた石で、柔らかくて加工しやすく、また堆積岩にしては比較的耐久性があるので、かつてお寺の石段や石塔などに使われました。
山頂から海や新緑の山並みを見晴らして
衣張山山頂から望む景色
石切り場跡を出てさらに道を登れば、いよいよ、衣張山山頂に到着です。標高約120m。眼下に青い海、鎌倉のまちの三方を囲む山並みを望む、爽快な景色! 新緑のころの山々の緑の美さに、目を見張って。山頂には五輪塔もあり、歴史の趣がただよいます。ぜひ、ここでシートを広げて、お弁当としましょう。
この衣張山には、源頼朝が、暑い夏、山の周囲に白い布を張り巡らせて雪に見立て、妻の政子とともに愛でたという話が伝わっています。頼朝の、権勢を表す伝承です。
ここから、今きた道とは違う方の山道を下っていきましょう。新緑のころには、木々の芽吹きが美しい道です。道の途中で、卯の花とも呼ばれるマルバウツギの白い花に出会えるかもしれません。
ウツギは漢字で「空木」と書き、幹の中心に穴が開いていることが多いのが特徴。鎌倉の5月の谷戸でよく出会える、清楚な白い花です。
少し歩くと、ほどなく浅間山(せんげんやま)へ到着します。
こぢんまりとした山頂ですが、逗子方面のまちなみや海も望めます。衣張山が混んでいたら、こちらでお弁当を食べてもいいですね。
芝生広場でのんびり~子ども自然ふれあいの森
さらに山道を下っていくと、鎌倉市子ども自然ふれあいの森へ着きます。ここでは左手に進みますが、時間と体力がある方は、さらに奥へ進むと富士見台、トイレの前を経て、360度の視界が広がるパノラマ台、名越切通(なごえきりどおし)方面にも出られます。
左手に進んでいきましょう。やがて、小さな池が見えてきます。野生の生き物を大切にしようとつくられたビオトープで、春先にはオタマジャクシが見られることもあります。
のびやかな丘の芝生広場は、シートを広げてのんびり休憩したり、お弁当を食べるのにも良い場所です。5月初めには、藤棚に藤が咲いているかもしれません。
さらに奥へ、左の森沿いに進むと、やがて左手に曲がって折れる、山道が見つかります。2本目の、少し太い方の道を下っていきましょう。
アオキが茂る森の道を10分も下れば、舗装路に出ます。ここは、宅間谷(たくまがやつ)と呼ばれるところ。滑川に注ぐ細流が道の脇を流れており、せせらぎがチャラチャラと心地よく響きます。
レトロな趣の洋館~旧華頂宮邸
しばらく下っていくと、道沿いの柵越しに、趣のある洋館が見えます。ここが旧華頂宮邸です。昭和4年、華頂博信(ひろのぶ)侯爵邸として建てられました。今は市に寄贈されており、公開期間中は庭園に入ることができます。平らな敷地を利用し、道で幾何学的な模様を描いたフランス式庭園で、5月や10月ごろには、バラが咲きます。
春と秋の施設公開では、建物の中に入ることもできます。施設公開日は、ホームページに随時掲載されるので、確認してみてくださいね。
<DATA>
■旧華頂宮邸
住所: 鎌倉市浄明寺2-6-37
アクセス: 浄明寺バス停より徒歩約8分
庭園開園:4月~9月 : 10:00~16:00 / 10月~3月 : 10時~15時
休園日: 月曜日・火曜日(祝祭日の場合は開園とし、次の平日を休園)、年末年始
地図
鎌倉市ホームページ
すがすがしい竹の寺~報国寺
やがて報国寺の前に出ます。竹寺として知られるお寺で、拝観すると、モウソウチクの見事な竹林の中を歩くことができます。建武元年(1334年)、足利尊氏の祖父・足利家時が建てたお寺といわれています。ここは、室町幕府六代将軍の地位をめぐる争いに敗れた足利持氏の子・義久が、10歳にして自害した、悲劇の地でもあります。
裏山にはやぐらと呼ばれる大きな横穴があり、足利一族の墓と伝えられています。すがすがしい竹林の中でお茶をいただくこともできるので、最後に一服してもいいですね。
<DATA>
■報国寺
住所: 鎌倉市浄明寺2-7-4
TEL:0467-22-0762
アクセス: 浄明寺バス停より徒歩約3分
拝観料:200円・お茶500円
ホームページ
地図
境内にトイレあり
報国寺前を抜ければ、浄妙寺バス停に着きます。ここからバスで、鎌倉駅へ戻りましょう。あまり知られていない衣張山は、静かな新緑の中で気持ちよく森林浴できるすてきなところです。ぜひ歩いてみてくださいね。
<DATA>
■コースタイム
鎌倉駅からバスにて約20分
杉本観音バス停から山道入口まで約10分
~頂上まで約30分
~浅間山まで約10分
~鎌倉市子ども自然ふれあいの森まで約15分
~旧華頂宮邸まで約20分
~報国寺前まで約5分
~浄明寺バス停まで約5分
合計115分、休憩・昼食など入れると2時間半程度
■バス
行き:鎌倉駅東口から京急バスの金沢八景駅行きか鎌倉霊園正門前太刀洗行きバスに乗車
帰り:浄明寺バス停から京急バスの鎌倉駅行バスに乗車
※2019年9月の台風により倒木が多く発生し、現在鎌倉の山道の多くは立ち入り禁止となっています。また開通の情報が入り次第、こちらにご報告します。