チーズ/おすすめハードチーズ

アルプスのチーズ「ボーフォール」

フランス・サヴォワ地方のハードチーズ「ボーフォール」。アルプスの高地で放牧され、青々とした牧草を食べて過ごした牛のミルクは栄養もあり、おいしさも格別。そんなミルクで作られたチーズは、気品とコクがあり、あらゆるチーズを食べ尽くした人をも魅了するチーズです。

かのう かおり

執筆者:かのう かおり

チーズガイド

ボーフォールの基本データ

タリーヌ種

牛。タリーヌ種。画像提供:アルパージュ

原産地:フランス
種類:ハードタイプ
原料乳:牛。牛の品種はタリーヌ種かアボンダンス種。
固形分中脂肪分:48%
形状:側面がくぼんだ車輪型。直径35cm、高さ11~16cm、重量20~40kg
季節:1年中。アルパージュものは秋から

 

ボーフォールとは

ボーフォールのカット断面

ボーフォールのカット断面。画像提供:アルパージュ

ボーフォールという名は、フランスのサヴォワ地方の村の名前。アルプスの山々が連なる山岳地帯で、山を越えれば、もうそこはイタリア。冬が長くて雪でとざされるため、保存食として昔から大型のハードチーズや、ソーセージなどがつくられてきました。

牛は、冬の間は牛舎の中で干し草を食べていますが、短い夏の間には放牧され、アルプスの青々としたやわらかい牧草や花を食べて過ごします。その時期に出すミルクで作られたチーズは、栄養価も高く、味も色も濃くて、おいしさも格別です。

ボーフォールには3種類あります。普通のボーフォール、「エテ」、「アルパージュ」です。

「エテ」は、6月から10月末までの放牧中のミルクで生産されます。製造場所はコーポラティヴ(共同組合)で、ミルクは各群れのものが混ぜられます。「エテ」とはフランス語で「夏」の意味です。

「アルパージュ」は、標高1500m以上の高地で放牧される一群れの牛のミルクを原料として、夏の間だけ山小屋(シャレ)で作られます。したがって個性的で希少で高価なチーズです。


わたしが好きなチーズ「ボーフォール」

ボーフォールのカーブ(熟成庫)

ボーフォールのカーブ(熟成庫)。くびれが素敵。画像提供:アルパージュ

「一番好きなチーズは何ですか?」と聞かれることがあります。なかなか困る質問ではありますが、挙げるとすれば、ボーフォールもそのうちのひとつ。わたしは以前、チーズ留学をしていましたが、その地に決めたのがサヴォワ地方。長期熟成で旨味のつまったハードタイプのチーズのふるさとに行きたかったので、アルプスか、ピレネーか……と悩みましたが、滋味あふれる味わいを舌に思い浮かべ、やっぱりボーフォールでしょ!と、サヴォワに決めたのでした。

サヴォワについてからは多くのチーズショップやマルシェをめぐり、日本では普通には見ることができない、ホールのボーフォールを見て、やっぱりあのくびれが素敵、とひとり感心したり、現地のチーズショップでは、ボーフォールだけでも、普通のボーフォール、エテ、アルパージュ、と並んでいて、全て買って食べ比べてみたり、語学留学で来ている留学生には、せっかくサヴォワに来たのだったらボーフォールを食べなければ意味がない、と言い、食べさせたり。チーズが嫌いだった子も、おいしいボーフォールを食べて、すっかりチーズの虜になりました。


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