断熱についての基礎は理解しておきたい
快適で居心地のよい住まいを実現するには、断熱に充分に配慮することが必要です。断熱性能は、冷気や熱が、躯体や開口部(窓や扉)などを伝わって出入りするのを抑え、一年中、家全体の温度差を少なくし、快適な室内温度環境を生み出すもの。冬場の冷たい空気の侵入を防ぐだけでなく、夏場の暑い空気の侵入を防ぐ重要な役割もあるからです。また、断熱することで、結露を防ぎ建物本体の耐久性を高めたり、無駄なエネルギーの使用が減らすことにもつながります。断熱を含め、住まいの性能に関しては、専門的で難しいことも多く、新築やリフォームの際には、施工会社や設計担当者が提案を採用する、というケースも多いでしょう。しかし、詳細は分からなくても、基礎的なことは理解しておくことも大切です。
住宅の断熱性を高めるのは、断熱材と断熱開口部材
住まいの断熱化に用いる建材には、壁や天井、床などに施工される断熱材と窓や扉といった開口部に用いる断熱開口部材などがあります。断熱性能の高い住宅をつくるためには、これらを用いて家全体を隙間なく包むことが重要。外壁はもちろん、天井(小屋裏がない場合は屋根)や床も断熱施工が必要ですし、土間床や基礎、もちろん、窓や扉などの開口部にも断熱建材を用いることが断熱工事の基本です。断熱材には、素材、商品などさまざまな種類がある
壁や天井、床などに施工される断熱材は、簡単にいうと、熱が伝わりにくい空気を閉じ込めることで断熱効果を持たせたもの。繊維を用いて空気を動かないようにしたり、空気を小さな粒状にするなどの工夫を施した建材です。断熱材には、いくつかの種類、分類方法があります。素材では、「繊維系」と「発泡プラスチック系」があり、それぞれにいくつかの種類も。形状では、「フェルト状」「ボード状」「ばら状」「現場発泡」などがみられます。
主な断熱材の種類と特徴
■繊維系断熱材 無機質繊維系と木質繊維系細い繊維の間に空気を閉じ込めた断熱材。その空気の層が断熱の働きをすることになります。無機質繊維系と木質繊維系に分かれ、それぞれいくつかの種類があります。最近では、羊毛、炭化コルクなど天然素材を使ったものもみられます。
<無機質繊維系>
・グラスウール
ガラスを高温で溶かした細いガラス繊維を加工したもの。床・壁・天井などに用いることができる軽くて施工しやすい断熱材です。不燃材料であり、比較的安価で、吸音性や耐久性にも優れるため、最も普及している住宅用の断熱材といえるでしょう。厚さがあり、密度が高いほど断熱性能は高まります。
・ロックウール
耐熱性に優れる鉱物を溶かし繊維状にした断熱材。防火・耐熱性、撥水性、耐久性、防音・吸音性に優れ、床・壁・天井などに用いることができます。充填(じゅうてん)、外張り、拭込みなどの工法に適した製品も揃っています。
<木質繊維系>
・セルロースファイバー
天然木質繊維を用いたもの。湿気を吸収、放出する機能をもつ木質繊維なので、断熱材の内部結露を防ぐことも。防音性にも優れます。
・インシュレーションボード
木材の繊維質をボード状に加工したもの。リサイクル木材や未利用木材などが用いられています。吸湿・放湿性を持つので、内部結露を防ぐことも。軽量で加工しやすく、下地材や仕上げ材などにも使用されます。
■発泡プラスチック系断熱材 軽量で吸水性が小さい
発泡プラスチック系断熱材は、いずれも軽く、吸水性が小さく、断熱性に優れています。繊維系と比べると一般的に、コストは高めと言えるでしょう。
・ビーズ法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂に発泡剤などを加えてビーズ状にしたものを発泡させたもの。ひとつひとつの粒の中に気泡を持つ断熱材で、水や湿気に強く、軽量なので加工性や施工性にも優れています。
・押出法ポリスチレンフォーム
ポリスチレン樹脂などに、難燃剤や発泡剤を混ぜ、押し出しながら成形した板状のもの。薄くても断熱効果が高い断熱材で、水に強く、耐吸湿性も優れています。外張り断熱にも適しています。
・硬質ウレタンフォーム
細かい独立気泡で形成されています。気泡に熱を伝えにくいガスが含まれているので、断熱性も優れています。ボード状のもの、現場で直接吹き付けるタイプもあります。
・フェノールフォーム
フェノール樹脂に発泡剤などを加えてボード状にした断熱材。素材の安定性が高いので、長期間にわたっての断熱性能が期待できます。耐熱性や防火性能に優れています。
断熱材の施工方法
断熱材の施工方法にも、「充填」「外張り」「吹き込み」など、いくつかの方法があります。また、これらを併用するケースもみられます。■充填断熱工法 木造住宅で広く用いられる
柱と柱の間に、ボード状もしくはシート状の断熱材を入れたり、断熱材を機械で吹きこむ工法。木造住宅では、最も広く用いられています。比較的施工価格が安価なこと、用いることができる素材の種類が多いこと、外壁仕上げ材に影響しないことなどがメリット。主にグラスウール、ロックウールなど繊維系を用いますが、発泡プラスチック系を使用することもあります。
■外張り工法 建物全体を断熱材で覆う
柱(構造躯体)の外側にボード状の断熱材を取り付けるもの。建物全体を断熱材で覆うため、熱ロスを防ぐことができるので、気密性能も高くなります。比較的施工コストが高く、壁に厚みが増すことで狭小敷地では難しい場合も。ボード状の発泡プラスチック系を主に用いますが、ボード状の繊維系を使用する場合もあります。
■吹込み工法 天井裏や壁の空間に吹き込む
ばら状の断熱材を天井裏や壁の空間に機械で吹き込むもの。グラスウール、ロックウール、セルローズファイバーなどを用います。
断熱材単体の性能はもちろん、隙間なく正しく施工することが重要
このように断熱材には多くの種類があり、施工方法もさまざまですが、気をつけたいのは、断熱材そのものの素材単体だけでは、性能の良し悪しを決めることはできない、ということです。決められた施工方法に則って工事を行えば、基本的には断熱効果を得ることができます。もちろん素材によって、施工のしやすさやしにくさはありますし、断熱する部位によっては優劣がある場合も。また、使う断熱材によっては、防湿気密層、通気層などが必要なこともあります。重要なのは、床・壁・天井などに隙間なく、正しい施工方法で工事を行うこと。施工技術が確かなこともポイントでしょう。
断熱材や施工方法など、知識と実績のある施工会社を選ぶ
理解しておきたいのは、地域の気候風土や建物の立地条件によって適する断熱材や施工方法は異なりますし、建物の構造や工法によっても違ってくるということ。また、同じ条件でも、住宅メーカーや工務店によっても提案する断熱方法が異なることも。使用する断熱材の特徴や選択理由、工事内容などを確認し、費用も含め、しっかりとした説明のできる知識と施工実績のある会社を選ぶことが大切です。現場や工場見学会などを利用して、使用される素材などを確認してもいいでしょう。【関連記事】
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