日本人の口に合う洋食を-名物は「ポークカツレツ」
この日は1人で開店時間を狙い移動を開始。目論み通り11時15分ちょうどに到着です。すでに並んでいた人たちが順番にスタッフの方に人数を聞かれ、店内の席へと案内されていきます。店へ入ると、すぐ左手に会計所とわずかなテーブル席、右手には上階へ続く階段が目に入ります。地下に続く階段もありますね。店舗は地下から3階までの構造で、この日は2階のテーブル席に通され腰を落ち着けます。
オーダーは事前に決めていたこともあり即決。久々に「ポークカツレツ」(1300円)と、併せてライスを注文します。このポークカツレツは、洋食黎明期の同店苦心の作であり、看板メニューです。
バターや香辛料が日本人の口に合わず外国人客ばかりが目立っていた創業当時、なんとか日本人向けに、と試行錯誤。生パン粉やラードを使用し、さっぱりとした味を目指した創作洋食がポークカツレツです。これがヒットとなり、同店ではその後も日本人に合った洋食づくりを継続。ハヤシライスやオムライスなど次々と人気メニューを生み出しています。
誕生当時からレシピを変えていないポークカツレツは、現在のトンカツ店等で出されるものほど厚さは無いものの、ジューシーでサクサクです。塩コショウなど下味を感じるのでそのままでも食べられますが、テーブルに置いてあるウスターソースをかけるとさらにご飯が進みます。
ちなみに普段揚げ物に添えられている見慣れたキャベツの千切りも、実は同店発祥とのこと。周囲の客を見渡すと、やはりこのポークカツレツを頼んでいる人が多いですね。
まかないメシからメニューに昇格した「オムライス」
別日に今度は知人と2人で伺います。銀座という場所柄、素早くランチをすませるビジネスマンをよそに、ビールやワインなどを飲みながら、ゆっくりと語り合い食事を楽しむ常連客や、富裕層と思われる方々が見受けられます。ちなみに、美食家で知られる作家、池波正太郎が愛した店というような特集がメディアでよく組まれますが、煉瓦亭もその一つに数えられていますね。
この日の知人のお目当ては「元祖オムライス」(1300円)、わたしは「エビライス」(1300円)です。もともと賄(まかな)い飯だったという同店のオムライス。玉子焼きでケチャップライスを包むオムライスが一般的な中、同店のものはちょっと違いますね。半熟のトロトロした玉子がコーティングされて一体となったライス、その様子がはっきりわかるビジュアルです。
一方のエビライス、個人的にその名前だけで以前から注文したかった一品です。ゴロゴロとした海老が10個前後入った見た目で食欲をそそってくれるこちら、チキンライスのチキンの代わりに海老が入っているようなイメージでしょうか。2品とも非常にシンプルな味付けで逆に新鮮さを感じます。
2人でお互いのメニューをシェアしながら、あっという間に完食を。会計を済ませて颯爽と午後の仕事に……とやってきた1階の会計所……パっと目に留まるのが年代物のレジスターです。老舗店に相応しいイイ雰囲気を醸し出していますね。これはこれで一見の価値アリかと。
日本人向けの西洋料理、その定着に尽力した洋食店で、ランチはいかがでしょうか?
■煉瓦亭
・住所:東京都中央区銀座3丁目5-16 煉瓦亭ビル
・TEL:03-3561-3882
・営業時間:平日11:15~15:00、16:40~21:00(土曜・祝日は20:45まで)
・定休日:日曜日
・地図:Yahoo! 地図情報
※上記すべて取材時(2014年3月)の情報・価格です。