ピアノ奏者 スタンリー・カウエル「恋のダンサー」より「ア・ホール・ニュー・ワールド」
恋のダンサー
シングルカットされたものは、ソウルシンガーのピーボ・ブライソンとレジーナ・ベルによって歌われ、ビルボードのホット100の総合チャートで、見事一位になりました。
その年代を問わずに人気があるポップなディズニー映画からの曲を、60年代には前衛的なピアノを弾いていたスタンリー・カウエルが取り上げたというところが面白いところです。
前衛的なジャズやフリージャズをやっていたミュージシャンからしてみれば、ポップスをメロディアスに演奏すること自体が、まさに「ア・ホール・ニュー・ワールド」(新しい世界)。
民族的主張やメッセージ性の強いハードなピアニストだったスタンリーが、年齢を重ねてやわになったのではなく、新しい世界をちょっと覗き見たくなったということなのかもしれません。
そのスタンリーのはじけるような心躍る感じがよく出ているピアノのタッチからは、いくつになっても新しい局面に興味や勇気をもって立ち向かう姿勢を感じます。
全米一位となった綺麗なメロディにさらに躍動感を与えたこの演奏は、まさに新しい世界に挑戦するあなたを勇気づけてくれる演奏と言えます。
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トランペット&ヴォーカル ルイ・アームストロング 「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」より「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」
この素晴らしき世界
そのルイが、「ハロー・ドーリー」のヒットに続けとばかりに録音したのが今回ご紹介する「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」です。
この曲は、発売当時よりもむしろルイが亡くなってから人気が出ました。そして今ではルイの代表曲の中でも、あらゆるジャンル、世代を超えて一番親しまれている曲になりました。
木々やバラ、空や雲、赤ん坊の泣き声や成長など何気ない日常の生活を、なんと素晴らしい世界でしょう、と歌う内容です。ルイの特徴的な声と歌い方によって、時代や場所を超え、生き生きとリアルに心に届く気がします。
まるで、ルイの考える素晴らしい世界が目の前に展開しているかのように感じさせる表現力。噺家の名人に共通する芸を感じてしまいます。
あなたがこれから体験する新しい世界が、どんなところであろうとも、きっとどこかには素晴らしい世界がある。そう思わせてくれる、希望を持てる曲と言えます。
次のページでは、新たなる旅立ちにふさわしい、海(航海)と空(飛行)をテーマにしたジャズをご紹介いたします。
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