何をしてあげても「だから?」を連発の男の子
「ええ!それって、あり!?」と度肝を抜かすシュールな結末が待っている絵本『だから?』。小さな男の子ビリーは、クールというか、ドライというか……。パパが楽しませようと珍しいものを見せにいったり刺激的な体験をさせたりしても、反応は必ずただ一言「だから?」。そんなビリーが迎えた大変な事態にパパが投げかけた言葉は!?大人には新鮮な結末も、幼児期のお子さんは、受け止め方が様々だと思います。ラストで「こわい!」で終わってしまう子もいるかも!? 親子で読む場合は、ストーリーや言葉の裏側にあるもの対し自分の意見を表現できるようになってきたお子さんだと、一緒に深く味わえるのではないかと思います。
衝撃のラスト
「だから?」とビリーに言われ続けたパパが、助けを求めるビリーに対してラストシーンで投げかける言葉に対しては、受け止め方が様々だと思います。絵本って、ドキドキハラハラする展開があっても、ラストでは心を落ち着かせてくれたり笑わせてくれたり、こうあるべきではないだろうかというような方向性を示唆するものが多いですよね。でもこの絵本では、読者は予想外の結末に、ポーンと投げ出されたような落ち着かない気持ちを味わいます。「え? これで終わり?」「ビリーはどうなっちゃうの?」「これを読んで子どもはどう感じる?」……。何に対してもクールな子、本当に喜んでいない?
ところでビリーは、お父さんがビリーを楽しませようとしてくれた色々なことに対して、本当に喜んでいないのでしょうか。私はこの絵本を読んで、一番上の子が4~5歳だったころを思い出しました。家族で楽しみたいと思って出かけたテーマパークで、どんな乗り物に乗っても華やかなパレードを見ても、ほとんど反応なし……。日々作って出す食事も、食べっぷりだけを見れば満足しているのだろうなあと思いつつも、反応はほとんどなし……。正に、「だから?」と言われているような気分になったことも数知れず。しかし、何にも感じていないわけではないのです。テーマパークのパレードで流れていた曲を、帰って来てから繰り返しCDで聞いてリズムを取ったり、大好きなきんぴらごぼうを食べている時には淡々としているのに、スーパーに買い物に行ったときに野菜コーナーでごぼうを手にしてかごに入れてきたり。子どもの、喜びや好きという気持ちの出し方には大きな個人差があり、大人が期待していたような形で表れてこない子も多いもの。もしかしたら、ビリーもそんなタイプなのでは!?
シュールな結末について考えてみた
「だから?」しか言わないビリーにパパが見せたのは、なんと「世界で一番はらぺこのトラ」。一大事に陥ったビリーをお父さんが見放すかのように見えるラストですが、本当に見放しているのかな? 表面ではクールに振る舞っている子どもも色々な感情を抱えていて、その子どもと接するパパやママもそれを分かっていて、ちょっとやそっとでは動じない。トラが出てくる終盤は、ギョッとしますが、そんな親子の姿が誇張してユーモラスに描かれているようにも感じらます。しゃれた雰囲気の分かりやすい絵にシンプルなストーリーから、皆さんはどんなことを考えるでしょうか? ビリーのような子だとこうなっちゃうよ、と伝えるか。ビリーはなぜ「だから?」しか言わない子なのかを考えるか。なぜ、絵本の中でずっと愛情たっぷりに見えたパパが助けを求めるビリーに冷たい言葉をかけたか考えるか。理屈抜きでとにかくシュールな絵本としてストレートに楽しむのも1つの味わい方。
世の中が理屈通りにいかないように、絵本だって必ずしも意図したように終わるものではありません。幾通りもの受け取り方が存在し、幾通りもの受け取り方を自分で生み出すことができるということを、体験できる絵本。物事について自分の意見を持ち始め、親子で意見を言い合えるようになったお子さんと、ぜひ味わって楽しんでいただきたいです。