マンションは「誰」のものか?
これにもとづくと、マンション管理士のミッションは、以下の3つであると考えています。
(1)管理組合の「経営力」の向上
(2)維持管理コストの適正化
(3)ライフサイクルコストの低減
これら3つのミッションのうち、特に(1)は、(2)と(3)に対して大きな影響を及ぼすものでもあり、最も重要な項目と言えるでしょう。
執行機関の「理事会」は、輪番制の素人集団
管理組合の運営を担う役割として、通常は「理事会」と呼ばれる執行機関が設置されます。理事会は、組合を代表する「理事長」、それを補佐する「副理事長」、そして組合会計等を監査する「監事」などから構成されます。理事会役員は、通常の場合1~2年の任期制となっていますが、立候補がほとんどいないのが通例であり、なり手不足に陥らないよう、またお互いが公平な負担となるよう、「区分所有者間の輪番制」で運用しているケースが多いのです。
企業で例えれば、理事会はいわば「取締役会」に相当する機関です。にもかかわらず、理事長などの経営陣は輪番制や抽選によって1年ないし2年で交代していくのですから、専門性やマネジメント力が高まる余地はほとんどないと言えます。
管理会社への依存体質こそが最大のリスク
管理組合の運営は、年度ごとの事業計画と予算を総会で決定⇒それを執行機関である理事会が具体的に討議しながら適宜実施 ⇒ 年度末に決算とともに、総会で実施した事業内容を報告する、という繰り返しです。これらの運営を実質的に一手に引き受けているのが、管理会社です。多くの管理組合は、予算や事業計画の作成はおろか、理事会や総会の運営まで、管理会社に「おんぶに抱っこ」の状態で依存しているのが現状です。
その結果、チェック機能が働かず、何から何まで管理会社の言いなりになり、「マンションは誰のものか」と尋ねたくなるような管理組合もあります。
たとえば、下記のような「症状」が当てはまる場合は、かなり危険な兆候であると考えられます。
・年に1~2回しか理事会を開催しない。
・定期総会の議事進行は、管理会社がすべて代行している。
・議事録の作成も管理会社にお任せで、理事等はその確認しかしない。
・大規模修繕工事も管理会社に一切お任せしている。
管理組合がこのような状況に陥ると、様々なリスクが高まります。管理会社の傀儡となり、彼らの好き勝手にされてしまう結果、おカネが嵩む割には管理状況も良くない、必要な保守点検も実施されていない、必要でもない工事が行われる・・などです。
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