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東日本大震災から3年 都市型住宅と防災について(2ページ目)

今回の記事のテーマは、防災や減災に配慮した住宅についてです。東京都中野区に建てられた「街かどヘーベルハウス」を事例に考えていきます。また、想定される首都直下地震について、私たちができることについても考えていきます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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「街かどヘーベルハウス鍋屋横丁」には、100人の人たちが3日間暮らせる備蓄品が用意されていました。食糧や水はもちろん、発電機や簡易トイレなど幅広い内容です。町内会との協力により実現したものだといいます。

100人×3日分の備蓄品を用意し、地域に貢献

町内会の方にカギを渡し、大きな災害がひとたび発生した場合は、利用できるようにしているとのことです。もちろん、この建物が売却されてしまった場合は、この協力関係は無くなってしまいますが、それまでの間は備蓄拠点となるわけです。

ヘーベル版

耐火構造部材「ヘーベル版」の耐火実験の様子。このように30分程度燃やしても裏面はほとんど熱くなっていないことが確認できた(クリックすると拡大します)

旭化成ホームズの担当者いわく「まだ試行段階」とのことですが、首都圏各所に同様の「街かどヘーベルハウス」を持つわけですから、それらが防災のための備蓄拠点になると、周辺住民には安心ですよね。このような取り組みは、企業の社会貢献のあり方として評価されそうです。

「街かどヘーベルハウス鍋屋横丁」は、古い木造住宅が建ち並ぶ、住宅密集地に建てられています。こうした場所では、首都圏直下地震が発生した場合、大きな火災が発生することが懸念されています。この建物はその際に地域の防災の拠点として機能するよう考えられて建てられているわけです。

では、首都圏直下地震とはどのような災害規模が想定されているのでしょうか。昨年末に政府の中央防災会議により見直された被害想定によると、マグニチュード7クラスの首都直下地震が起きた場合、最悪で死者2万人以上、経済被害が約95兆円とされました。

注目すべきはその主因。地震後の火災被害が大きく「最大61万棟が全壊・焼失する」とされています。あくまで最悪の想定で、「おおげさな」と思われるかもしれませんが、東日本大震災の「想定外」の被害を私たちは経験したわけです。できる限りの対策はしておかなければいけません。

防災会議の想定では、耐震化や火災対策を徹底すれば死者は10分の1以下、経済被害は半減できるともされていました。つまり、住宅に求められる防災性能の第一は、まず倒壊しないこと。次に近隣で発生した火災から、人と財産を守ることが求められるのです。

エネルギー自立ができる住宅の重要性とは?

もう一つ大切なのは、首都直下型地震のような災害が発生した場合、食糧や水の確保が非常に難しくなるだろうということです。最悪1週間は支援物資が私たちの元に届かないというケースも考えられると思います。要するに、自分で自分の身を守らなければいけない時期が、相当期間続くと考えられるわけです。ですから防災備蓄についても気を配るべき。

備蓄品

1階の親世帯の部屋に備えられた備蓄品。水や食料など100人×3日分が用意され、万が一の際に周辺の人たちに配布されるようになっている(クリックすると拡大します)

もちろん電気やガス、水道などのライフラインも大きな被害に遭うことも考えられます。その復旧には多大な時間がかかることでしょう。ですから「街かどヘーベルハウス鍋屋横丁」のようにエネルギーの自立ができる住宅とすることも重要となるわけです。

災害への備えがある住宅というのは、そこに暮らす家族が避難所などで過ごす期間を減らし、通常の生活に戻ることを早めてくれます。また、電力が確保できればなおさらで、テレビで情報の収集ができるだけでもいくらか気持ちに余裕が出るはず。

そして気持ちの持ち方次第ですが、その住宅を地域の人たちに少しでも開放してあげれば、地域の貢献にもなります。災害時には人と人とのつながり、「絆」が重要とされますが、皆さんが防災性能の高い住まいを建てればそのような貢献ができるかもしれません。

余談ですが、東日本大震災当時、私の住む埼玉県川口市など東日本エリアでは計画停電などで大きな影響を受けました。あれは辛かったですね。特に夕方から夜にかけての停電では街が眠ったようになっていましたから、何とも不安な気持ちで時を過ごしていました。

そんな状況の中、災害時でもエネルギーが自給自足でき、明かりを灯している住宅が1軒でもあれば、私たちは安心感を得られるのではないでしょうか。このところの震災報道に触れる中で、私はそんなことも改めて考えました。
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