自宅外通学の大学生の9割以上は仕送りあり!!
入学から卒業までの大学費用(大学に支払う費用)は私立文系で400万円というのが、一般的に知られている数字です。しかし、実際はその倍かかるとすればどうでしょう。ただし、すべての学生に該当するわけではありません。留年、落第を想定しているわけでもありません。いわゆる「仕送り」費用が上乗せされた場合です。仕送りという言葉には何となく「昭和」の香りがしますが、親による子ども支援システムは今も脈々と生きています。全国大学生活協同組合連合会が実施した「第57回学生生活実態調査(調査時期/2021年10~11月)」によれば、親元を離れて生活する大学生の割合は48.6%。そのうち仕送りをまったく受けていない大学生は、わずか7.5%に過ぎません。したがって、大学生の約半数の親は、仕送りという「もうひとつ」の教育費を背負っているわけです。
では、仕送りはいくら必要なのでしょうか。先に紹介しました「学生生活実態調査」から見てみましょう。2021年の仕送り費用の平均額は月7万1880円(図表1)。前年比1470円増となり、この10年、ほぼ7万円前後で推移しています。
また、10万円以上の仕送りは27.9%に達しています(図表2)が、生活費の平均が11万5620円ですから、大半の学生が仕送りだけでは足りず、奨学金やアルバイトなどの収入でカバーしているという実態が見えてきます。
教育費が足りないなら家族全員で支え合う
もちろん、必要な仕送り額は個々の状況によって異なります。しかも、入学する大学が先に決まらなければ具体的な数字は出せません。先の仕送り費用の平均額を目安にすれば、4年間で345万円。さらに新生活に必要な資金(賃貸住宅の敷金・礼金、家具・家電の購入など)も加算すれば、ざっと400万円。大学に支払う学費とは別に、これだけ用意できる余裕が家計にあれば、仕送り費用の負担もそう心配は要らないでしょう。しかし、実際はそれほどの余裕はない世帯が大半。それでも仕送りが発生してしまったら、どう対処すべきでしょうか。日本政策金融公庫が発表した「教育費負担の実態調査結果(2021年度)」によると、教育費の捻出方法上位5つは以下のとおり(3つまでの複数回答)。
「教育費以外の支出を削減/28.6%」「子どものアルバイト/21.5%」「奨学金/19.2%」「預貯金、保険の取り崩し/18.8%」「残業時間やパートの時間を増やす/10.1%」。家族が個々に行えることはすべて行って教育費を捻出している、そんな姿が浮かんできます。
教育費の捻出方法のうち、奨学金はここ数年、その内容が充実しています。2020年度からスタートした「高等教育の修学支援新制度」は、大学・短大・専門学校・高等専門学校の無償化がその内容。対象となるのは、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生で、世帯年収によって段階的(3段階)に授業料等を減免します。例えば、住民税非課税世帯の場合、国立大学は入学金と授業料がほぼ無償に。私立大学は入学金が約26万円、授業料が年間で約70万円減額されます。
また、同制度では返還義務のない給付型奨学金も実施しています。自宅外通学の大学、短期大学、専門学校に通う学生には、住民税非課税世帯の場合で、学校が国公立なら月6万6700円、私立なら月7万5800円が支給されます。
物価高のときだからこそ家計の見直しを
一方、仕送りだけでは生活がきびしい学生に「逆風」となっているのが、2022年後半から顕著になってきた物価高です。とくに食料品はまっ先に値上がりし、学生生活を直撃。アルバイトの時給もなかなか上がらない中、1日1食で過ごす学生も少なくないとか……。加えて、2023年には電気料金が高騰。平均30%の値上げは、必然的に仕送り額のさらなるアップが求められます。また、先に触れた国の修学支援制度は、条件的に利用できない世帯も当然あります。利用できないからと、教育ローンや返済型の奨学金を安易に利用することは大きなリスクをともないます。慎重な検討が不可欠で、無理な借り入れは禁物です。
大事なのは、家計の見直しや収入アップなどを目指しつつ、1万円でも5000円でも、可能な範囲で教育費の積み立てを上乗せしていくことです。しかも、その開始は早い方が望ましいでしょう。また、直前で慌てないよう、前もって仕送り費用などの情報を収集しておくことです。
コロナ禍に続き、世界的な物価高は、教育資金の用意をさらにきびしいものとしています。しかし、世帯によっては、これが家計の見直しのいいキッカケとなるかもしれません。ともあれ、多少でも教育資金を増やすことができるよう、家族で協力し合いながら、家計管理を進めていくことです。
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