京都東山、ウェスティン都ホテル京都の別館「佳水園(かすいえん)」
どこにいても、「何気なくある椅子」が気になる。
そして、その場所、空間の一部になりきっている風景がそこにある。
ひんやりとした空気が漂う数寄屋建築の一角に、柔らかい光を通して低くゆったりとした椅子とテーブルが佇む。
深々と椅子に座るとその瞬間に、時間が止まり、こころも穏やかになる。
外掛けのすだれ越しに、低い水平線の屋根で仕切られた庭園の午後、「今日一日、良い日和ですね」と雑談が聞こえてくる。
久しぶりの京都で過ごすひとときは、格別なもの。
ここは、東山・南禅寺からほど近い場所にあるウェスティン都ホテル京都の別館:佳水園(かすいえん)。
都ホテル本館ロビーからエレベーターで7階へ。それから長い中廊下を歩くと外へ出て少し歩くと、目の前に数奇屋(すきや)建築が現れる。
数寄屋造り(すきやづくり)とは、日本の建築様式のひとつ。語源の「数寄」(すき)とは和歌や茶の湯、生け花など風流を好むことであり、「数寄屋」は「好みに任せて作った家」といった意味で茶室を意味する。
周囲の緑に生える数寄屋造りの門は、大小コントラストを効かした敷石と茅葺き屋根のどっしりしたもの。表札には「佳水園」。
門をくぐると階段と敷石の黒と木立のように連立する柱に向こうに心地よい建物と庭の空間が目に入る。
建物の大きい面、細かく、繊細な周辺のディテール(詳細部分)の組み合せが美しいハーモニーを奏でている。
まさに、日本の美、「日本人でよかたぁ~!」の瞬間だ。
軒の高さは低く、屋根の勾配は緩やかに、そして屋根をいくつにも分割し重ね合わせることで、大きな建築をまるで小さな建築の集合群のように見せている。
あくまでも各々が薄く、細く、軽く触れ合う間合いの妙がたまらない。
そして建築の集合群の目線の正面に位置する窓等、開口部の格子がアクセントアイコンとして空間を締めている。