愛犬が健やかなシニアライフを送れるように

一般社団法人ペットフード協会の「平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査」によれば、犬の飼育数のうち7歳以上の犬が55.7%を占め、このうち10~12歳の犬は19.1%、13歳以上は17.3%という結果になっています。ここ5年間を見ても、13歳以上の犬は少しずつ増える傾向にあり、人間同様、犬の世界でも着実に高齢化が進んでいるということです。

では、少しでも健やかなシニア犬ライフを送るには、どのような気配りをし、どのように世話をしてあげたらいいのでしょうか。この記事では知っておきたい老犬・シニア犬ケアの基本的なポイントについてお話します。

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老犬・高齢犬の食事

シニア犬の食事1

高齢になると脚の踏ん張りがきかない上に、首の位置が下がるだけでも体に負担がかかりやすい。立っていられる犬の場合は、食器を台に乗せてあげるとよい:(c) L.M

■ごはんの内容
高齢になってくると消化機能も低下し、栄養を吸収しにくくなってきます。タンパク質の合成能力が低下するとともにタンパク質不足によって筋肉量も落ち、免疫力の低下や貧血を招くこともあります。筋肉を維持するにはタンパク質(アミノ酸)が必要。できるだけ良質な動物性タンパク質が摂れるようにするとともに、消化のよいものを与えるようにしましょう。

同様にカルシウムの吸収も少なくなり、骨も弱くなってきます。バランスのよいカルシウムとリンが摂取できるようにして骨粗しょう症も予防したいものです。

また、脳や神経系の働きを助けたり(認知機能の改善)、血液の流れをよくしたりする他、皮膚のバリア機能に作用し、抗炎症作用(皮膚炎、関節炎、腎臓病など)もあるオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)も積極的に摂取したい栄養素の一つで、それらが含まれるフードをチョイスするか、食材やサプリメントなどで添加してあげるといいでしょう。

EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)はα-リノレン酸から変換されることで体内に摂り入れられるのですが、犬はそれに必要な酵素を少ないながらもっており、変換すること自体は可能です。しかし、高齢ゆえにしくくなっていたり、しにくい個体もいると思われるので、EPAやDHAの形で摂取するのも有効でしょう。

参考までに、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、ともに体内で合成することはできず、食事から摂取する必要のある必須脂肪酸です。この両者はお互い影響し合うことで前出のような作用が期待できるとされています。オメガ3脂肪酸を豊富に含むものとしては亜麻仁油やえごま油、サーモンオイルのような魚油、マグロやイワシをはじめとした魚類、オメガ6脂肪酸では月見草オイルなどが知られていますが、過剰摂取はかえって害になることがあるので、くれぐれも与え過ぎにはご注意を。

そして、腸の動きも不活発になり、便秘や下痢になりやすくなるのがシニア期です。便秘予防には適度な食物繊維も必要。腸内細菌も変化・減少しがちなので、時々ヨーグルトを与えるのもいいでしょう。ガイドの愛犬の場合は、2~3日に1回くらいの割合でヨーグルトを食べさせていました。

その他、人間でも犬でも加齢するごとに体は酸化していくと言われます。そこで注目したいのは抗酸化作用のある栄養素と食材です。それには、たとえば以下のようなものがあります。

-ビタミンE-
カボチャ、ほうれん草、ニンジン、ブロッコリー、イワシ、ウナギなど
-ビタミンC-
りんご、みかん、ブロッコリー、芽キャベツ、ほうれん草など
-βカロテン-
ニンジン、ほうれん草、カボチャ、ひじき、ワカメなど
-ポリフェノール(フラボノイド)-
りんご、バナナなど

時々、このような食材を食事に取り入れてみるのもいいのではないでしょうか。ただし、与える量や回数は愛犬に合わせて調整してください。

■ごはんの与え方
高齢になると食が細くなったり、硬いものは食べづらくなったりする他、食べ物の好みが変わるということもあります。より食べやすくするためには、

・シニア犬用の柔らかいフードに切り替える
・お湯やスープなどでふやかして柔らかくする(ドライフードの場合)
・トッピングをする、スープをかけるなどして食いつきをよくする
・食欲はありそうなのに食べない場合は食材を替えてみる(豚肉だったのを鹿肉にするなど)
・自力で食べるのが困難な犬では流動食にする

などの方法がありますが、消化機能も低下していることを考えると、一日の量はそのままに、食事の回数を若干増やしてあげるといいでしょう。

シニア犬は体を動かさない分、飲水量が減ったり、飲みたくても水飲み場まで行くのが難しいということもあります。極力水分を摂取できるよう、ウェットタイプのフードを使用したり、スープ分が多めの食事にしたりするのもいいと思います。

食事を与える時には、立って食事ができる犬でも、脚の踏ん張りがきかなくなったり、首を下げて食べるのがだんだんと負担になったりすることがあるので、食器を台の上に置いて食べさせる、状況によっては食器を口の高さで持っていてあげるなどするといいでしょう。そうすることで体にかかる負担を軽くすることができます。

ちなみに、ガイドの愛犬の場合は前庭疾患のため首が曲がり、かつ頭部がふらふらと動いてしまうので、深さのある食器は使えず、平たいお皿にごはんを乗せて、愛犬の口の動きに合わせて持っていてあげながら食べさせていました。愛犬にとって、どうしたら楽に食べられるかを考える、それもポイントだと思います。

なお、床が滑りやすいのに加え、食器を床に置いて食事を与えている場合、中には脚が滑って踏ん張りきれず、食べる気はあってもなかなか食べられないというケースも見受けられます。結局、食べない(食べられない)ので、飼い主さんとしては食欲がないのかと心配になってしまうところですが、床の滑りが原因になっていることもあるということです。そのような場合は、食器を台の上に乗せるとともに、食事台の周囲に滑り止めのマットを敷いてあげることをお勧めします。
(*本来であれば、足腰のためには若い頃から滑りにくい床の上で生活させてあげるのがベストです)
寝たきりの場合

寝たきりの犬の場合は、少しでも頭を高くして食事を与えたほうが安全:(c) L.M

次に、自力で立てなくなった犬では、フセの状態が保てるならその姿勢で、それも無理な場合は抱っこをし、体を支えながら食べさせてあげます。寝たままであってもクッションや枕などを使い、頭が少し高くなるようにしてあげるといいでしょう。というのは、寝たままで食べさせると、場合によっては食べ物が飲み込みきれず、食道に引っかかってしまうことがあるからです。
流動食となった犬

流動食を与える時はシリンジやハチミツの容器などが便利:(c) L.M

流動食になった犬では、シリンジ(針のない注射器)やハチミツの容器、ドレッシングボトルなどを使って、口の横から少しずつ流し込みます。この時、注意したいことが一つ。特に抱っこをして食べさせる時、天を仰ぐように顎をグッと上に向かせ過ぎて食べさせると誤って気管に入ってしまうことがあるので気をつけてください。
 

老犬・高齢犬の運動 

散歩中のシニア犬

歩行を補助してお散歩。少しでも体を動かすことは体や脳を刺激し、心身によい影響を与える:(c) L.M

高齢になってくると動きも不活発になり、寝てばかりのことが多くなってきます。動きたがらないからと散歩も休みがちになってしまうところですが、動かなければその分筋力も落ちてくる上に、関節の動きも硬くなってしまいます。また、刺激のない生活は認知症につながることも…。

少しでも体を動かす、外の空気にあたるということは、体や脳を刺激して心身によい影響を与えるので、無理のない範囲で適度な運動をさせてあげましょう。

自力で歩ける犬では、そのコのペースに合わせてゆっくり歩くだけでもかまいません。シニア犬はちょっとしたことでケガもしやすいので、散歩に出る前には軽く関節を動かしたり、マッサージをしたりして体をほぐすようにするといいでしょう。

散歩の距離は若い頃より短めにし、様子を見て、必要であれば休憩を入れてあげるようにします。忙しい毎日の中ではなかなか難しいかもしれませんが、状況が許すなら、距離が短い代わりに散歩の回数を増やすのもいいかもしれません。

また、運動器に問題がないならば、階段(段差が低くて奥行きのあるもの)や傾斜の緩い坂道をゆっくり上り下りするのも筋力トレーニングになります(ただし、短い距離で)。室内でも「オスワリ⇒立つ⇒オスワリ」「オスワリ⇒フセ⇒オスワリ」「巻いたタオルを何本か並べてまたがせる」などでも筋力やバランス感覚のトレーニングになるので、散歩に出られない時などやってみるのもいいのではないでしょうか。その他、バランスディスクやバランスボールを取り入れるのもいいでしょう。

脚がふらつく犬では、歩行補助グッズを使って歩くのを手助けしてあげます。前出のような運動はリハビリ効果も期待できるので、すでに運動器に問題があったり、歩行困難な犬でも状況や運動内容によって取り入れることは可能ですが、リハビリ専門の獣医師曰く、ことバランスボールは自己判断で使うとかえって余計な個所を傷めてしまうことがあるとのことなので、一度それに詳しい動物病院や専門家に相談してからのほうがいいでしょう。

立てない犬や寝たきりの犬の場合は、体を起こし、伏せや立ち姿に近い姿勢にさせてあげるだけでも筋力トレーニングになりますし、気持ちの面でも刺激を与えてくれます。脚の屈伸運動やマッサージも体がこわばるのを予防し、血行を促す効果があるので、日々のケアとしてお勧めです。

そして、可能な範囲で、抱っこやカートに乗せて外の空気に触れさせてあげるのもグッド。きっと心身にいい影響を与えてくれることでしょう。
 

老犬・高齢犬が安心できる寝場所

寝たきりとなったシニア犬

犬にとって安心できる寝場所を。ベッドは体に優しい素材を選びたい:(c)L.M

これまで自分専用の場所で寝ていた犬が、家族が集まるリビングで寝たがったり、飼い主のベッドの近くで寝たがったりというように、犬も高齢になると人を恋しがるようになることがあります。家族と一緒にいることで安心できるのかもしれませんね。その一方では、騒々しさを嫌うようになることも。どちらにしても、なるべく家族の目が届いて、安心できる寝場所をつくってあげることをお勧めします。可能であれば、そのような場所を2~3ヶ所つくれると理想的でしょう。

また、シニア犬は体温調節がしづらい上に睡眠が深いため、温度変化に気づきにくいことがあります。夏場はエアコンの冷気が直接寝場所にあたらないよう(冷え過ぎで下痢をしたり、関節症が悪化することも)、冬場は暖房器具にあたり続けて低温火傷を起こさないよう注意を。

温度の他、湿度にも配慮が必要です。もともと犬は暑さより湿気に弱いもの。湿度50~60%前後が犬にとっては過ごしやすいとされますが、人間の目線より低い位置で暮らしている犬たちのこと、時々は犬目線での温度や湿度をチェックすることも忘れずに。

そして、あれこれ迷ってしまうのがベッドです。特に、寝たきりになった場合は床ずれ予防のためにもベッドの素材は気になるところ。近年では体圧分散効果から、より床ずれを起こしにくいとされる高反発マットが注目されています。高反発である分、寝返りもうちやすく、犬の起き上がりを助けてくれるのは利点です。

ただ、睡眠に問題のある犬など、体をすっぽり包み込んでくれる感のある低反発マットのほうが向いている場合もありますし、実際、高反発マットと低反発マットをその時々で、または体の部位ごとに使い分けている飼い主さんもいます。

とにかく床ずれを予防したいのか、よく眠れるようにしてあげたいのか、バタバタ動いてしまうので少しでも落ち着いて寝かせてあげたいのか、愛犬の体のどこが弱っているのか、床ずれができているのかなど、何を優先するかで少しずつ違ってくるのではないでしょうか。

少なくとも、以下のような点はチェックしたいですね。
・反発度が高過ぎず、沈み込み過ぎない
・ある程度厚さがある
・通気性がいい
・洗濯が楽で乾きも早い
 

老犬・高齢犬が徘徊するようになった時の対処

徘徊中のシニア犬

徘徊の症状が出てきた時には、ケガ予防の意味も含め、お風呂マットのようなものをサークル状にして対処することも可能:(c) L.M

認知症の症状が出てくると、前には進めるものの後ろに下がることができず、家具の間や狭いところにはまり込んでしまうことがありますし、意味もなくただふらふらと歩き続けることもあります。(注:狭いところに入り込んで出てこられない場合、認知症ではなく、単に体力の衰えが原因となっているケースもあります)

ずっと見ていてやれるならともかく、そうそう愛犬につきっきりというわけにもいきません。家具の隙間などはなるべく塞ぐとともに、愛犬から目を離す時にはお風呂マットのようなクッション性のあるものをサークル状にして、その中で歩かせておくとケガの予防にもなります。小型犬であれば子ども用の簡易プールでも代用できるでしょう。その他、犬に歩行補助ベストを着せた状態で、背中の持ち手に長めの帯状のものを付け、その帯を高いところから吊るすことでくるくる回れるように対処しているケースもあります。最近では柔らかい素材でできた介護用のサークルも売られているので、そういったものを使ってみるのもいいと思います。
 

老犬・高齢犬の冷え対策

冷えや床ずれ予防に靴下

足先の冷え、床ずれ予防に靴下をはかせるのもよい:(c)L.M

シニア犬は体の脂肪も落ち、新陳代謝や体温調節機能も低下することから寒がることもあります。そのような時は洋服を着せる、犬用ヒーターを使うなどして保温を。ペット用であっても低温火傷防止のためにタオルでくるむ、バスタオルを敷くなどしたほうがいいでしょう。

また、寝たきりになると血行も悪くなって脚が妙に冷えることもあります。脚がバタバタ動く犬では傷もつくりやすいので、冷えやケガ・床ずれ予防として靴下をはかせるのもいいと思います。
 

老犬・高齢犬の排泄 

高齢になるとトイレが我慢しづらくなり、粗相をしてしまうこともあります。環境に余裕があり、トイレを2~3ヶ所設置できるようなら理想的ですが、庭や外でトイレをする犬ではなるべくこまめにトイレに連れ出してあげたいものです。

そうは言っても歩行が困難になってから毎回トイレに連れ出すのもなかなかたいへんなこと。できれば若い頃から室内でもトイレができるようにしておくとベストです。高齢だからもうしつけは無理かというと、そうでもありません。ガイドの愛犬も高齢になってからトイレシートですることを覚えましたし、時間はかかるかもしれませんが、再トレーニングは不可能ではいので、必要であればトライしてみてはいかがでしょう。

次に、ふらつきがある犬の場合は補助をしてトイレをさせ、自力での排尿排便が難しい犬は定期的に搾り出してあげるようにします。犬の性格によっては補助されていることが気になってトイレができないという場合もあるので、力加減や手を触れる箇所は愛犬の様子を見ながら調整を。

オシッコが出きらずに膀胱に残っていると細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎になってしまうことも。できるだけ出しきるように気をつけてください。慣れないうちは難しいかもしれませんが、やり方についてはかかりつけの動物病院で教えてもらえるはずです。

また、状況によってはオムツが必要になることがあります。犬用のオムツも売られていますが、人間の赤ちゃん用や介護用のものにしっぽを入れる穴を開けて代用することも可能です。太腿周りとしっぽの付け根は漏れやすいので、そこがぴったりになるものがいいでしょう。ただ、オムツはかぶれが出ることもあるのは難点で、常時付けっぱなしにするというよりも、留守にする時や夜間など必要な時に付けるようにするのがいいと思います。

寝たきりで動けない犬の場合は、オムツをはかせるより、お尻の周囲にトイレシートを敷いておくほうが処置しやすいです。いずれにしてもオムツが必要な犬や寝たきりの犬では、お尻やしっぽの付け根の周りは被毛を短くカットしておいたほうが、汚れが最小限で済み、お手入れが楽になります。
 

一生懸命になり過ぎて、自分を追い込み過ぎないように

老犬介護生活になると、それが長引けば長引くほど、世話にかける時間や精神的・金銭的負担で私たちのほうが疲れきってしまうこともあります。特に初めての老犬介護では一生懸命になり過ぎるあまり、自分を追い込んでしまいがちです。中には、そのイライラから、可愛いはずである愛犬に対し、ついきつい態度で接してしまう飼い主さんも…。

ガイド自身も老犬介護の経験がある分、その気持ちは十分わかりますが、気負い過ぎてしまうとさらに疲れを呼ぶだけでしょう。それを避けるためには、愛犬はもちろん、自分にとっても少しでも楽になれる方法を考え、よい意味での手抜きを考えることが介護生活のキーポイントになると思います。

知恵と工夫、忍耐、多少の大らかさ、そして愛情が必要。

シニア犬との暮らしは、ともに長く暮らしたからこその可愛さ、喜び、幸せがそこにはあるはずです。それを噛みしめながら、愛犬との愛しくももっとも濃密と言える時間をお過ごしください。多くの犬たちが少しでも健やかなシニア犬ライフを送れますようにと願っています。


【取材協力・画像提供】
レディのおうち
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