目的の行動まで、ステップを細かく考える
例として、「ベッドの上でくつろぐ」という行動を目的とし、そこに至るまでのステップを細かく考え、一つずつそのステップを追ってトレーニングしていく。 (KPA 認定インストラクター 山田りこさん/Rico's ケーナインマッサージスクール資料より) |
シェイピングを行う際のポイントにはどんなものがあるのでしょうか。以下に、そのポイントを。
1:ある行動を教える際には、そのコに合った行動を選ぶこと。
2:目的の行動に至るまでの、一つ一つのステップを細かく考える(上図<Go to Bed>を参照)。
3:目的となる行動をトレーニングするには、一回に一つの行動とする。同時に2つ以上の行動は教えないこと。
4:次のステップにいくまでに、今行っているステップの行動がきちんとできているかどうかを確認する。
5:新しいステップに進んだ時、それまでのステップにあたる行動ができなくなるということもあり。そういう時にはあまり厳しい目で見ず、リラックスしてトレーニングに望むこと。どうしても行動が完璧でないといけない、ということではない。
6:ステップに沿ってトレーニングをしてみても、どうしても先へ進めないということもある。そういう場合は、その行動がそのコには合っていないのかもしれない。別な行動を考えてみよう。
7:次のステップに進んで、なかなかうまくいかない時には、一つ…二つ…と前の段階に戻ってトレーニングし直すことも必要。
8:目的の行動にたどり着けたら、すぐにキューをつける。
クリエイティブに・観察力・犬に対するエンパシー
上記のポイントに、さらにつけ加えると。「上にある図のように、行動を細分化したステップをインクリメンツと呼んでいますが、これはなるべく細かく考えたほうがいいですね。次のステップへのハードルをいきなり高くしないこと。そして、是非ノートに記録しておくことをお勧めします。そうすれば、進み具合もより把握しやすいですから。また、教えたい行動を考える時にはクリエイティブに、そして、トレーニングに臨む際にはフレキシブルに、観察力をもってトライして頂きたいと思います。プランに沿ってトレーニングするのはもちろん、犬が少しでもストレスを感じているようなら無理をしない、あくまでも犬がポジティブに、楽しんでトレーニングをしていることが肝要です」(山田さん)
例えば、犬が間違って違うことを覚えてしまった時にはどうしたらいいのでしょう?
「その場合には、間違いを正すのではなく、それとは違う行動を強化することで、間違えて覚えてしまった行動を消去するように仕向けてください。目的の行動に達するまでには、場合によっては各ステップをさらに細かく段階化する必要も出てくるかもしれません。そのコにとって必要なステップを考えてあげてください」(山田さん)
リハビリやショーのステイポーズにも応用可能
「実際にリハビリの現場で、ナックリングするコにシェイピングを用いて脚の運びを再認識させたり、アメリカではショーのステイポーズを教えるのにも使われていたり、生活の様々なシーンで応用できるものなんですよ。例えば、病気やケガなど何らかの理由で上手にオスワリができずに、足先が横に流れてしまうコがいたとします。人間の手で、“この位置だよ”と足を強制的に正しい位置にもっていってやるよりも、シェイピングしながらクリッカーで教えてあげたほうがより高い効果が望める場合もあります」(山田さん)このように、“しつけ”という範囲を超えた部分にも活用できるのが、クリッカートレーニングだということですね。
では、次のページでは、実際にシェイピングを用いて、上記の図にあるインクリメンツに従い、“Go to Bed(自分のベッドに行ってくつろぐ)”という行動を教えてみましょう。