社会保険労務士試験/社会保険労務士とは

開業社労士の業務を知ろう「労務相談」(2ページ目)

開業社労士の仕事は、企業の人事・労務関係のアドバイザーとして、労務相談や労働・社会保険の手続き代行、就業規則の作成などを行うケースが最も多いでしょうが、その他にも個別労使紛争の解決業務や年金アドバイザーなど多岐にわたります。本コラムでは、開業社労士のそれぞれの仕事について詳しくご紹介いたします。

長友 秀樹

執筆者:長友 秀樹

社会保険労務士試験ガイド

クライアントの労務相談に対応する時の注意点

クライアント企業から受けた相談に対してアドバイスを行う場合、特に以下の3つのポイントに注意を払いましょう。

POINT1 クライアント企業の話をよく聞く
まずは相手の話をよくヒアリングしましょう。労務トラブルは、同じような種類の問題であっても、会社ごと、案件ごとに、対応策が異なってくるのが普通です。

例えば、会社の規模や業種、職場の風土やその時の労使関係の状況などによって対応策は異なるでしょう。時には従業員に対して強めに出た方がよいこともあれば、妥協した方がよいこともあります。また、そもそも会社としてどうしたいかを押さえておかないと、いくらアドバイスをしても空回りしてしまうだけです。

専門家だからと、相手の話をよく聞かずに自分の意見を一方的に押しつけるようでは、クライアント企業からの信頼を得られず結果的に問題解決に至らないことになるので、十分に気を付けて下さい。

POINT2 法的な根拠はしっかりと裏付けを取る
クライアント企業に、法的なアドバイスをする時は、その根拠をしっかりと押さえておきましょう。

法的根拠は、法律の条文だけではありません。厚生労働省の通達や過去の判例などまでも対象となります。社労士試験でも、代表的な通達や判例であれば勉強しますが、実務上はよりマイナーな通達や、最新の判例などについても調べる機会が多いと思います。

また、労働基準監督署やハローワーク、年金事務所などに直接電話などで問い合わせて、裏付けを取っておくことも大切です。

POINT3 クライアント企業が求めているのは法律論だけではない
クライアント企業にアドバイスを行う時は、法的根拠を押えることが大切だとお伝えしましたが、実は相手が最も望んでいることは、法的解釈(つまり、法的に問題あるかどうか、問題がある場合はその理由など)ではないことも多いと言えます。

相手が人事担当者の方であれば、ご自分が経営層に説明するために必要な詳しい法的根拠を求められることもありますが、経営層に直接説明する場合はむしろ「問題があるのならば、どのような対応策を取ればよいのか」について、プロの意見を求めているのです。

このような場面で、通り一遍の法律論しか話ができないと、経営層に不安を抱かれてしまう恐れがあるのでご注意下さい。

労務相談業務の報酬相場は?

企業から労務相談を受ける時のパターンには、以下の2つがあります。

○顧問契約
○スポット契約

顧問契約の内容には、労務相談だけのケースもありますが、労働・社会保険手続き代行とセットのケースも多いです。

顧問料の相場ですが、一般的には従業員規模に応じて定めることが多いと言えます。報酬金額の相場は、各社労士事務所の方針や受託内容によりケースバイケースですが、最低1~2万円程度から設定し、従業員数が多くなると10万円を超える報酬にもなります。

スポット契約は通常、顧問契約は結んでいないけども、何か労務問題が起きた時にだけ相談に乗ってほしいという場合の契約です。

この場合の料金は、一般にはタイムチャージ形式(料金の算式=単価×時間数)で請求することが多いでしょう。

さて、今回は代表的な相談事例を3つ掲載しましたが、開業社労士をしていると、本当に様々な相談が寄せられます。

簡単な相談もありますが、自社内では解決できないからと、非常に難解な相談が寄せられることもあります。そのような難問には良い答えを出すのに苦労しますが、そこで適切なアドバイスを示すことができ、その結果、クライアントから感謝の言葉をいただいた時などは、とても社労士冥利に尽きる瞬間です。

皆様も是非、企業の良きアドバイザーを目指して、社労士試験にチャレンジして下さい。
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