後席の広さは家族ユースでも十分に対応
まず、驚かされるのが後席の広さだ。全長と全高がジュークよりも長いとはいえ、1.5倍くらいの広さ感がある。身長175cmくらいの人が4人乗っても閉塞感を抱かないほどの室内の広さで、フィット同様に後席の座面を跳ね上げられるから、ベビーカーや観葉植物などを積載したり、アウトドアの際に着替えたりする際にも重宝しそうだ。後席座面を前倒しすればMTBが積めて、助手席の背もたれも寝かせればサーフボードなどの長尺物も入る。
もうひとつのウリであるハイブリッドの設定もライバルにはない魅力。今回試乗したハイブリッドの27.0km/LのJC08モード燃費はクラストップで、実燃費でも6割も走ってくれれば御の字のはず。今回の試乗では、とくにエコランに徹しなくても燃費計は17~20km/Lを指すことが多かった。
高速道路ではハイブリッドの燃費の威力は半減してしまうが、普段は街中や郊外路中心、オフにレジャーなどで高速を長く使うというのであれば十分に満足できるのではないだろうか。
エコランも、飛ばしても良しの走り
ホンダ車お馴染みのECONスイッチをオンにしたままだと、とくに速さは感じさせず、街中や高速道路でも流れに乗るのに不足はないという程度だが、山道や追い越し車線などでの加速時にはECONスイッチをオフにしてしまえば大半のシーンでこと足りてしまう。さらに、「スポーツ」モードに切り替えるとメーターがレッドに変わり、アイドリングストップもオフになるが、高回転に張り付き、スポーティカーといえる走りを披露してくれる。タウンユースでは必要性は感じないが、イザという時に速く走れて、走りも楽しめるのはいかにもホンダらしい。
振動感応型ダンパーを採用するが乗り心地は硬め
良くも悪くもかなり引き締まった乗り心地もホンダらしい。とくに、後席の突き上げはかなり大きく、路面状態が悪いと上下だけでなく、横方向にも身体を揺すられる。高速道路やワインディングなどで飛ばすと、頼りに感じられるハンドリングではあるが、最も走行シーンの多いはずの街中での乗り味はもう少しマイルドでもいいと思う。ヴェゼルにはフィットにはない「振動感応型ダンパー」がフロントに採用されている。乗り心地と操縦安定性の両立がウリだが、全長が短いジュークよりも乗り心地が悪く感じてしまうシーンもあり、長時間後席に乗るのは辛く感じた。操縦安定性はかなりハイレベルなだけに、乗り心地は改善が必要だろう。
総合力ではホンダ・ヴェゼル
長所も短所も分かりやすいホンダ・ヴェゼルだが、クーペ風のデザインでスマートでありながら広大な後席や使いやすい荷室などを備えており、ホンダのいくつかの先達SUVのように消えていってしまうようには到底思えない。ハイブリッドの燃費や後席、荷室の使い勝手を考えると、輸入車勢も含めて増えつつあるコンパクトSUVの中でも総合力ではかなり高いのがヴェゼルといえる。