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モビリオとフィットの走り

フィットのプラットホームから発展したモビリオ。高いシャシーポテンシャルを持っているが、適応速度域はフィットと異なり、それがフットワークに違いに現れている。

執筆者:川島 茂夫


自動車専門誌をよく読む人ならば「ボディ剛性」とか「フレーム剛性」といった単語を目にする機会も多いだろう。要するに車体骨格部に荷重をかけた時の変形量の少なさ(頑丈という意味ではない)のこと。剛性が高いと車輪の接地角度などを正確に制御できるから、操安性や乗り心地が向上する可能性がある。だから、たいていの場合「剛性が高い」は「操安性や乗り心地が良い」ことを意味する。


さて、ここからが本題だが、周知のとおりモビリオはフィットとフロアやサスペンショの多く(プラットホーム)を共用している。とはいえ、ボディ周りがまったく異なるので、骨格構造は別になる。モノコックとはいえ、現実的にはビルトインフレーム的な設計を施す現在の乗用車では、骨格構造が異なれば、車体剛性が違って当然である。

中にはプラットフォームが共通ならば、性能も大同小異という論法と採る人もいるようだが、それが論理上正しくないのは、説明するまでもないだろう。ただ、優れた性能を発揮したクルマのプラットホームならば高いポテンシャルを備えているだろうし、そのプラットホームを利用して派生したクルマのシャシー性能が優れている可能性も高い。

フィットの操安性は優秀、ならばモビリオも優れているだろう。という論法も、シャシーの持つポテンシャルを示すならば否定はできないが、あくまでもポテンシャルは可能性であり、どう利用するかのほうが実際の走りでは影響が大きい。

フィットは経済性と込み入った市街地での取り回しのよさをセールスポイントにしたタウンカー型のクルマである。しかし、ファミリーカーとしての素養も大きいのが特徴である。それはサスチューニングにも現れ、一般的なタウンカーと比較すると、かなり高速域の安定性を重視した味付けになっている。そのため、日常域ではけっこう厳しい乗り心地を示すのだが、高速も山岳路も安心して走れる。高速長距離走行も小排気量2BOX車にしては苦にしない。

しかし、モビリオは違っている。モビリオのフットワークは日常域にウェイトを置いたもので、高速域は不安感を覚えない程度というもの。フィットに比べれば高い全高や重心高、さらに大きな開口部など操安面でのハンデが大きい設計にしては頑張っているが、まずは日常域での乗り心地や軽快な運転感覚が大事、そんな印象を受けてしまう。

サスチューニングは狙う速度域や想定する走り方で随分と違ってしまう。例えば、タウンユース限定ならば低い速度域での乗り心地や交差点も曲がり角での軽快な操舵感覚が重視される。小さな負荷でも大きくストロークさせるようなチューニングになりやすい。速度が上がるほどに大きな負荷が掛かり、しかも大負荷が掛かっている時間も長くなる。当然、タウンユースでの軽やかな走りを重視したサスチューンでは、車体の動きの抑制が利かなくなりやすく、各車輪に掛かる荷重やストレスが不安定になる。

新型マーチの高速操安性の評価があまり芳しくないのも、シャシーの持つポテンシャルそのものよりも、タウンユースに割り切ったサスチューニングによるものである。
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