住みたい街 首都圏/住みたい街の見つけ方

多摩田園都市60周年。過去と未来を考える(2ページ目)

首都圏有数の人気沿線東急田園都市線沿線、梶が谷から中央林間にかけて広がる多摩田園都市エリアは2013年に発案から60周年を迎えた。今の人気に繋がる開発の歴史から将来構想までを見てみよう。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド


歩車分離、クルドサック方式など、
安全に暮らすための敷地計画

遊歩道

たまプラーザ駅から住宅街へ向かう歩行者専用道路。緑の濃さが印象的

多摩田園都市のシンボル的な住宅街といえば、たまプラーザ駅から北に広がる元石川第一地区だろう。ここは駅からたまプラーザ団地を抜けて住宅街で歩行者専用道路が伸びており、道路の脇には公園も。これは歩行者と車を完全に分けたラドバーン方式と言われるもので、安全に歩けるのはもちろん、車が入ってこない分、住環境は静かに保たれてもいる。

 

もうひとつ、特徴的なのはクルドサック方式と言われる、車が通り抜けられないように袋小路状にデザインされた道路。一番端はロータリーとなっており、そこからは歩行者道路が続く。ロータリーには木が植えられていることが多く、空間の広がりが感じられる。クルドサック自体はときわ台など、他の住宅街でも見ることができるが、規模は小さく、街全体の思想として考えられるほどの例はない。このエリアの大きな特徴である。

また、あまり意識されることはないが、踏切がない点もポイント。踏切事故が起こらないのはもちろん、交通渋滞を招く要因もなく、音の問題も気にならない。見逃されがちだが、大事な点だ。

公園、街路樹、緑化運動など
ほっとできる緑の多い街づくり

並木道

並木のきれいな通りが随所に。樹種が通りの名まえになっていたりもする

緑が多いのもこのエリアの特徴。計画的に公園が配されているのはもちろん、幹線道路には並木があり、場所によって樹種が違うのも知られているところ。同じ緑でも通りによって異なる景観が楽しめるわけだ。

 
また、住宅の前庭に植栽を設けるようにしたり、車道に円弧状に張り出した植え込みを作るなど、緑化を強く意識した住宅開発も行われている。こうした場所では車もスピードを落とさざるをえないわけで、緑と安全をうまく組み合わせた例だ。

分譲住宅に建物の規模を抑え、敷地内に多くの植栽を配した物件が多いことも、街全体に緑を感じる要因のひとつ。特に1970年代に建てられたマンショには日本建築学会賞などを受賞した作品もあり、計画全体のレベルも高い。

さらに1972年からは住民も巻き込んだ東急グリーニング運動なる、緑の街づくり運動が始められ(現在はみど*リンクアクションという名称に変更)、公募で選ばれた企画を東急電鉄が支援するという形で続けられている。こうした努力の結果だろう、多摩田園都市ではどこを歩いても緑、四季があり、ほっとする。

たまプラーザ、青葉台……、
商業施設充実で暮らしやすさも

たまプラーザ

子ども連れから高齢者、女性同士と様々な年代の人が往来するたまプラーザ駅前

駅前に商業施設が充実していて暮らしやすい点も特徴のひとつ。代表的なのは沿線だけでなく、エリア全体からも買い物客が集まるたまプラーザ。長らくたまプラーザ東急ショッピングセンターとして親しまれた建物は2010年にリニューアルされ、それと同時に駅一帯が開発され、たまプラーザテラスとして生まれ変わった。多くの開発では一度建てたものはそのまま使われ続けるが、こうして時々テコ入れすることは、広く関心を集め、人気をキープするために重要な点だろう。

 

それ以外の駅でも、駅周辺にはスーパー、大型家電店その他が立地しており、日常の買い物に困るような場所はない。逆に駅から離れてしゃれた店が点在する場所などもあり、買い物事情は全体としてはかなり良いほうだ。

二子玉川

開発が続く二子玉川。これまでは住宅と買い物だけの街だったが、そこにオフィスができるなど、多機能な街に変わりつつある

また、多摩田園都市エリアとは離れるが、ターミナルである渋谷との間に二子玉川という新しい商業、ビジネスの吸引力のあるスポットができたのも沿線全体の価値上昇には重要なポイントではないかと思う。他の沿線で考えてみると、渋谷、新宿、池袋などの都心ターミナルと立川、千葉、横浜などの郊外中心地との間に大きな集客力のある街といえば、吉祥寺が思いつく程度。意外に少ないのである。

 

子育てからシニア向け、住み替えまで、
各種サービスも充実

しおり

沿線のシニア向けのサービスをまとめた冊子。住み替えから高齢者向けのサービス、医療、余暇の活用など様々なジャンルのサービスが掲載されている

鉄道、住宅供給だけでない、多様なサービスも沿線に住む利便性を高めている。内容としてはスーパーはもちろん、情報インフラあり、セキュリティサービスあり、住み替えサービスあり、学童保育事業あり、最近ではシニア向けのサービスやホームコンビニエンスと呼ばれる買い物、掃除、その他家庭内の作業をサポートするような事業など新しいサービスも増えており、実に多様。

 

ただ、あまりに東急グループのサービスに頼り過ぎていることを不安に思う人もいるようで、そのあたりは痛し痒しといったところ。これまでの経緯からすると、他社に入り込む余地は少ないということだろう。

さて、最後に現在の課題と今後について見て行こう。

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