眼瞼下垂とは(がんけんかすいとは)

眼瞼下垂の手術画像

眼瞼皮膚弛緩症で皮膚の切除手術を行った例 (左:術前。右:術後)

眼瞼下垂とは、上のまぶたが開きづらくなってしまった状態の事を言います。年をとっておじいちゃんやおばあちゃんになると、上まぶたがたるんだ感じになり、目がしっかりと開いてないように見えることがあるでしょう。極端に言うと、そのような状態を指します。

眼瞼下垂の症状

眼瞼下垂になった患者さんは、上方の視界が狭くなった、暗くなった、見づらい、などの症状を訴えられます。また、まぶたの中にある「眼瞼挙筋」という筋肉でまぶたを上げられなくなるので、その上にあるおでこやこめかみの筋肉でまぶたを上げるくせがついてしまい、おでこにしわができたり、おでこやこめかみが凝ったり、慢性的に頭痛がしたりといった現象や症状を併発することもあります。

例えば、顔にあんまりしわがないのに、おでこにくっきり3本しわがあるような人がいらっしゃいますが、よく見ると、やや眼瞼下垂ぎみで、おでこで無理してあげているからそうなっている場合が多々あります。(そういう自分も、最近ちょっとやばいかなぁと思って、自分で自分のおでこをなでなでしてしまうことがあります。40歳を超えると、老眼なんかも含めて、いろんな老いにまつわることが自分の体でわかってくるものですね。)

眼瞼下垂の原因・好発年齢

眼瞼下垂の原因は加齢です。通常高齢者に起こりますが、30代、40代でお悩みの方も多くいらっしゃいます。30代40代で加齢はないだろうと怒る方もたまにいますが、そういう人は、加齢と高齢を混同されているのです。ドライに言うと、生まれた瞬間から加齢が始まるわけで、たとえば3歳の子供でも今までなかったほくろがいつの間にかできていたりしますが、なぜかというとやっぱりこれも加齢なのですね。以下、加齢による眼瞼下垂について説明したいと思います。

ちなみに、時々生まれつきの眼瞼下垂の人もいます。生まれつきの方は、瞳孔が隠れるような重症例なら早期手術、そうでない場合は美容的な手術を行います。後者の場合は大きくなってからのほうが麻酔が安全にできるなどの面で有利、となります。やることは以下の「眼瞼挙筋短縮術」が基本となりますが、筋力自体が非常に弱い場合なども多く、その場合はもっと複雑な手術となります。子供さんの場合はともかくもあれこれ考えずに病院に直行してください。

眼瞼下垂になるメカニズム・眼瞼下垂の分類

まぶた(漢字では瞼と書きます)の中では、「眼瞼挙筋(がんけんきょきん)」という筋肉が、まぶたの中、一番下にある「瞼板(けんばん)」という軟骨についています。この眼瞼挙筋が縮むことにより瞼板を上げてくれるので、まぶたが開いています。

眼瞼下垂には2つのパターンがあります。

1.狭義の眼瞼下垂(blephaloptosis)
眼瞼挙筋が伸びきってしまったり、ひどい場合には眼瞼挙筋が瞼板から外れてしまったりして、まぶたが期待通りに上がらなくなる状態

2. 眼瞼皮膚弛緩症(がんけんひふしかんしょう)(blephalochalasis)
眼瞼挙筋の機能は正常範囲だが、皮膚がたるんできているために、まぶたが下がってるように見える状態

まず、このどちらであるかの診断が非常に重要です。もちろん両方同時に起こっている場合もありますが。

眼瞼下垂の治療・手術

眼瞼下垂は、手術で治療することになります。

■狭義の眼瞼下垂の手術法
眼瞼挙筋が瞼板からはずれていない場合は、眼瞼挙筋を折り込んだ状態で縫合することにより、眼瞼挙筋を短縮します。外れている場合は、眼瞼挙筋を瞼板の元の位置に縫い付けることによって、元に戻します。外れている場合も、外れる以前に眼瞼挙筋が伸びている場合がほとんどなので、短縮した状態で元の位置に縫い付けるというわけです。これを眼瞼挙筋短縮術と言います。

言うのは簡単なのですが、眼瞼下垂の手術はものすごく難しく、ゆえに専門の先生が専門的にやっているというわけです。

その理由についても解説します。まぶたの中は、表面から、皮膚、皮下組織、眼輪筋、脂肪組織、眼瞼挙筋、ミューラー筋、結膜という順番に層になっています。まぶたのようにうすいところにこれだけの層があるわけで、どの組織が何であるかの判別、医学用語でorientationというのですが、この判別がものすごく難しいのです。何せ、基本的に皮膚以外はすべて血管がたくさんで、出血もするし、真っ赤なのですから……。しかも、長年酷使されて、へろへろに伸び切った眼瞼挙筋はめちゃくちゃに薄いのです。

ちなみに近年、レーザーメスを使って止血を少なく切開して、眼瞼挙筋の裏にあるミューラー筋というものすごく薄い筋肉に到達して、それを短縮することにより、「狭義の眼瞼下垂」を治療するという方法がはやっています。これを「ミューラー筋短縮術」と言います。

この方法では、眼瞼挙筋は一切無視します。眼瞼挙筋がまだ瞼板にちゃんとくっついている状態でも、ミューラー筋に到達するためにそれをあえて切り離して、再度縫合することもなく、切り離された状態で永久に放置しておくと考案者の先生がおっしゃっていました。

この方法の利点は、何といっても手術が早く終わることです。上手な先生がされると、切開幅や出血も最小限で終わります。ですが、自分たちのグループではあえてこの方法を採用しておりません。

理由は2つあります。1つは、実は昔いた先生がこの方法で治療を行っていた時代があり、うちの病院ではレーザーメスも持っておりますが、その時の印象では、確かに効果はあるものの、うまい術者がやった眼瞼挙筋短縮術ほど安定していないと感じたこと。もう1つは、自分たちのグループは、あらゆる手術において、可能な限り元の(若いころの)状態に戻すことを基本としているので、眼瞼挙筋と強制的に「さようなら」することにどうしても抵抗があるということです。

ですが、上記の理由に関しても、自分がやればもっと確実だという先生もいらっしゃるでしょうから、そういう先生方には申し訳なく感じます。ミューラー筋短縮術に関しては、現在やっていない自分たちが良し悪しを語れる立場にありませんので、これ以上のコメントはここではご容赦いただければ幸いです。

■眼瞼皮膚弛緩症の場合の治療法
眼瞼皮膚弛緩症の場合は、簡単に言うと、余分な皮膚を切除します。切除には目のふちの皮膚を切除する場合と、まゆ毛の部分の皮膚を切除してひっぱりあげる方法があります。

目のふちの皮膚切除の利点は、切開創が、まぶたのしわや、ふたえまぶたの折り込みのような感じになって、術後に傷が目立ちづらい事です。欠点は、ふちに近いので、眼の形が期待したものと違う方向に大きく変わってしまうことがあることです。

まゆ毛の部分の皮膚切除の利点は、目のまわりにメスを入れないので、目の形が変になりづらいことです。欠点は、まゆ毛が濃い人はまゆ毛のふちを切ることによってまゆ毛にキズを隠せるが、そうでない場合は傷が目だちやすい事です。時間とともに薄くなってはいきますが……。


また、「狭義の眼瞼下垂」「眼瞼皮膚弛緩症」両方に当てはまりますが、症状が極めて軽度の場合は、皮膚に強制的に折り込みを作る、すなわち、二重まぶたを新しく作る、ないしはもともとあるのをさらに強く折り込むことによって、まぶたが少し上げることによって対処することがあります。利点は二重がきれいになること、大きな傷を作らないので術後がきれいなことが挙げられます。
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