美しいは正義
三菱一号館美術館(丸ノ内):ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900
アルバート・ムーア 《真夏》 1887年 ラッセル=コート美術館 Photograph reproduced with the kind permission of the Russell-Cotes Art Gallery & Museum, Bournemouth
前ページで紹介した「ラファエル前派」が登場してしばらく後、1860年代から1900年代のイギリスは、産業革命の成功に湧きながらも、デザインの粗悪な大量生産品にあふれ、その一方で日本をはじめさまざまな国の文化が流れ込むなど、多様な価値観が入り交じる混沌とした状況でした。
この時期に、行き過ぎた商業主義や功利主義を批判し、美にあふれた生活が重要だと考える人たちが出現しました。視覚的、触覚的な悦びを重視する『唯美主義者』の登場です。
彼らの「美」への飽くなき追求はイギリスを席巻し、芸術分野のみならず、一般家庭の室内まで美しく飾るようになりました。『真夏』は、そんな唯美主義運動の主要な画家のひとり、アルバート・ムーアの作品。絵画のなかに教訓や物語など一目でわかるテーマはなく、美しい女性を美しく描くことに心血が注がれています。このほかにも、あらゆる分野で「美」を追求する動きが現れるようになりました。
この展覧会は、日本で初めてこの唯美主義の全体を紹介するもの。イギリスのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の収蔵品を中心に、絵画作品だけでなく、家具やアクセサリー、写真なども展示します。「美」で世の中すべてを覆い尽くしたいと願う彼らの情熱は熱いです!また、この展覧会を見る前にラファエル前派展を見ておくと、よりいっそう理解が深まります。可能であれば両方ご覧ください。
ちなみに、この展覧会が開催されている三菱一号館美術館は、イギリス人ジョサイア・コンドルが設計し、1894年に竣工したもの。唯美主義最盛期にイギリスで流行していた「クィーン・アン様式」の建物は、作品と調和するすばらしい空間。作品と同様建物もお楽しみください。
■DATA 「ザ・ビューティフル――英国の唯美主義1860-1900」展 について
展覧会名称:「ザ・ビューティフル――英国の唯美主義1860-1900」展
会場:三菱一号館美術館
会期:2014年1月30日(木)~5月6日(火・祝)
開館時間:10:00~18:00(祝日を除く金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(4月28日と5月5日は18時まで開館。)
Web: http://mimt.jp/beautiful/
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