「the outline of everything」 2010、videostill

「the outline of everything」 2010、videostill


今日お話を伺うのは、映像作家の林勇気さんです。
林さんは、自分で撮影した写真を少しずつ動かすアニメーション手法を取り入れ、コンピュータで加工しながら、ひとつの映像作品をつくっています。林さんはどういう意識で作品をつくっているのでしょうか。

 


映画館で見る映画、と、美術館で見る映像作品、は違うの?


映画館での映画は、決まった時間からはじまります。ひとつの大きなスクリーンに向かって、私たちは椅子に座って作品を見ます。そして起承転結のような、ストーリーが展開されるもの。
しかし美術館での映像作品は、決まった時間にスタートしません。真っ暗の部屋に置かれた、いくつものスクリーンや小さなモニターを見て、しばらくすると流れている映像がループ(一周)。見ている私たちは、そのループを頭の中でつなげて理解します。ストーリーがあるものもあれば、つくっている作家の意図やコンセプトを重視している作品もあります。
時には、映画館のようなスクリーンだけではなく、映像を映す場所に工作して空間全体を楽しむ「インスタレーション」と呼ばれる手法の作品もあります。
林勇気さんのように映像作家は、予算や収益を目的とする映画とは異なり、自身の「つくりたい」という意志で作品をつくっています。


アーティストになるきっかけは?


学生時代の林勇気さん

学生時代の林勇気さん

林さんは高校のころ、特撮のメイクのような、映画のSFXに興味を抱いていました。「時代的にもCGが出て来て、映像自体に関心を持つようになりました。大学に入ってからは、映画にもいろいろな種類があることを知ったんです。映画監督になりたい、ミュージックビデオをつくりたいと思ったこともありましたが、ヤン・シュヴァンクマイエルのようなアートアニメーションに魅かれていきました。アニメーションも、テレビアニメのような絵が動いているものだけでなく、人間や動物を粘土でつくって動かすクレイアニメーション、実際の写真をコマ撮りして動かす実写系アニメーションなどがあるんです」。

 

林さんは一通りすべてやってみて、『記憶』や『視線』に興味を持つようになりました。そこで写真やビデオカメラで撮影したものを加工し、作品に仕上げました。
「作品をスクリーンで見たい、知らない多くの人たちに見てもらいたい、とコンペと呼ばれるコンテストのようなものへ応募するようになりました。大学院を卒業するころには、コンペをきっかけに世界各地の映画祭に招待していただけるようになりました」。
静止したものをとらえる絵画や立体作品と違って、映像作品には時間軸と動きがあります。
「美術作品として制作をしていますが、時間軸と動きが自分自身の作品になくてはならない要素のひとつだと考えています」。