厚生年金は減らないが、企業年金部分は減るかも
まず、誤解しないでほしいことがひとつあります。それは、「国の厚生年金相当については減らされない」ということです。どれほど積立不足があったとしても、もともと国からもらえたはずの厚生年金に相当する分は、きちんと穴埋めして制度を終わらせることが義務づけられています。つまり、厚生年金基金が代行していた国の厚生年金相当分についてはそのまま国に返上され、国から将来年金として受け取ることになります。この部分については損得なし、ということになります。
ただし、「企業年金の部分」については、それぞれ対応が異なってきます。国の厚生年金相当分を国に戻したのち、残っていた財産があれば、「制度は終了して、ひとりひとりに精算」、「新しい企業年金を作ってそこに引っ越し」のいずれかを選択します。新しい企業年金制度については確定給付企業年金制度と確定拠出年金制度、中小企業退職金共済制度が選択肢になりますが、個人が勝手に選ぶのではなく、会社単位でその選択を行います。
このとき、本来もらえる予定であった満額が引っ越しされたり、精算されるかは個々の厚生年金基金の状況によります。多くの場合、積立不足がある状態で制度の終了をはかることになるため、企業年金部分については減ることが多いのではないかとみられています。
いつ? どれくらい? 詳しくは厚生年金基金からのお知らせをチェック
さて、自分が厚生年金基金に加入していたという人は、今後どうなるか気になるところです。2013年3月末時点で、426万人の会社員が厚生年金基金に入っています。今回の法律改正に伴う見直しについては、厚生年金基金ごとに「いつ見直すか」「どう見直すか」判断することになっています。よって、どのような対応になるかは厚生年金基金から届くお知らせをそれぞれがチェックする必要があります。
まず「いつ見直す」ですが、解散を容易にする規制緩和は5年間実施するとしており、多くの厚生年金基金は2014年4月から2019年3月までのあいだに見直しを行うと予想されます。説明の書類が届き、同意書のサインを求めるタイミングを考えれば3~4年内には何らかのアクションがあるはずです。半分くらいは2014年のうちに動くかもしれません。
次に「どう見直す」については、厚生年金基金ごとの財政状況によります。国に厚生年金に相当する分を返したらそれ以上余裕がない、という場合は、企業年金部分についてはゼロという可能性もあります。こういう厚生年金基金の場合、企業年金相当分は毎月1万円弱であることが多いのですが、15年分の年金給付が保証される約束だったとすれば、180万円くらいのカットということになります。
国に厚生年金相当分を返したあと、まだ企業年金部分が残っていた場合、これはひとりひとりに分配して返金するのが原則です。この場合、30歳の人にはそこまで貯めてきた分、40歳の人にはそこまで貯まっていた分を返金するので、ひとりひとり返金される額は異なってきます。数万円の人もあれば数十万円ということもあるでしょう。
いずれにしても、制度を終了することになる案内と同意をお願いする文書が回覧されてくるはずです。何も考えずにハンコを押すのではなく、どのような状況かしっかりチェックしてください。
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