“戦闘モード”なスタイルと、ドライビングに徹したインテリア
英国の名門ロータス社。もはや、どこの資本がどうのこうの、なんて話は語る必要さえない。スポーツカー史に燦然と輝く歴史と伝統のみならず、今なお純粋なスポーツカーメーカーとして存続するそのクルマ造りに関しても、資本に関する周囲の雑音を無視するかのように、当代随一の硬派さ=スパルタンさを維持しているからだ。ロータス社の、現在の主力&ベーシックモデルはエリーゼだ。とはいえ、このクルマでさえ、既に世界最高レベルのピュアスポーツさを誇っている。そのエリーゼをさらにスパルタンに仕立てた、ほとんど公道を走るレーシングカーのような存在が、エキシージである。
元々の成り立ちからしてワンメイクレース用モデル“スポーツエリーゼ”をロードカーに仕立てたモデルをエキシージと呼びはじめたので、そのキャラクターを最新モデルのエキシージSも引き継いだ。ちなみに、車名のSはスーパーチャージドを意味している。
新型エキシージSで注目すべきは、やはり過給器付きのエンジンだ。これまでのエキシージ用エンジンといえば、エリーゼ用4気筒のパワーアップ仕様でしかなかった。最新モデルでドライバーの背後に積まれたのは、トヨタ製3.5リッターV6+スーパーチャージャーで、350ps/400Nmというスーパーカー級のスペックを誇る。トランスミッションはもちろん、古式ゆかしき3ペダルの6段マニュアルだ。
レーシングカーコンストラクターとして名を馳せ、伝統と経験を最新技術に生かすロータス社が送り出す、現在、ラインナップ最強の2シータースポーツカーが、エキシージSというわけである。
ワイドな前後フェンダーに小さなキャビン、そして迫力のエアロデバイス。さほど詳しくない人が見ても、エキシージSが“戦闘モード”一色のクルマであることは明らかだろう。「これで、ノーマル? 」、なんて聞きたくなった方も多いに違いない。それもそのはず、フロントスプリッターやリアディフューザー、リアスポイラーはサーキットユースを前提とした装備だ。その他、ビルシュタイン製ダンパーやアイバッハ製スプリング、APレーシング製ブレーキシステムなど、走り屋垂涎のアイテムも満載する。
成り立ちのプリミティブさもまたウリのロータスだが、エンジニアリング会社だけあって、最新の制御技術にも力を入れている。その一つがDPM(ダイナミック・パフォーマンス・マネージメント)で、エキシージSにも搭載された。オプションの“レースパック”を選べば、サーキットトラックで最適なセッティングとローンチコントロールを付加したモードも付け加えられる、という凝りよう。
アルミニウムとハンドトリムレザーを組み合わせたインテリアは、モダン・ロータスの文法に則った仕立てである。冷たいなかに熱さを秘めた雰囲気で、エキシージSを駆るドライバーの心持ちを代弁するかのようだ。
ドライビングの現場に徹したインテリア。スポーツカーにはシンプルなインテリアがいいと我々が言うとき、たいてい頭に思い描いているのが、ロータスのコクピットだったりする。