肩こりの原因は筋の持続的な収縮と伸張
多くの人が悩む肩こり。その原因は筋への血流が低下することにある
人間は二足歩行であるため常に両腕を胸郭からつるした状態になっており、さらには重量が5Kgある頭部を主に筋が支えています。この時、主に胸郭から頭部に走行している筋である上部僧帽筋や菱形筋、肩甲挙筋が頭部を支える筋としては考えられますが、肩こりを感じる場合の多くがこれらの筋になんらかの問題がある状態と言えるでしょう。
健康な状態であれば、筋の中に血液が流れ込み常に新鮮な酸素と栄養が行き渡ります。これらの酸素や栄養は筋の収縮-弛緩のエネルギーとして使われ、それによって発生した代謝物質などは静脈に乗って筋外へと運び出されます。
ですが筋が持続的に収縮する、もしくは引き伸ばされると筋に入り込む血管が圧迫され新たな血液が筋内に入って来なくなり、また静脈から代謝物質が筋の外に運び出される機能も阻害されます。
こうなってしまうと筋内に代謝物質が溜め込まれた状態となりますが、特に水素イオンが蓄積することで発痛物質であるブラジキニンや疼痛感作物質であるプロスタグランジン等が発生することが筋のこりによる痛みの原因であると考えられます。
ライフスタイルが引き起こすのは肩こりだけではない
肩こりになりやすい人は普段の生活習慣に原因があることが多いと考えられています。1日のほとんどを座り姿勢で過ごすことや、いつも同じ側の肩にバッグかけるまたは荷物を持つ、冷房の効いた部屋で一日中過ごすことなどの生活習慣がある方は肩こりになるリスクが高いと言えるでしょう。特に近年では、パソコンの普及などにより座って過ごす時間が長くなる傾向をもつ人が増加しています。株式会社ネオマーケティングが全国の20代~50代のシステムエンジニア職と営業職の男性各250名を対象に行った『デスクワークに関する意識調査』の結果、仕事柄パソコンに触れることが多いシステムエンジニア職では86.8%が6時間以上デスクワークを行っており、営業職の21.2%に対し約4倍になっていることなどが明らかになっています。
また、同社の調査では20代のエンジニアの73.6%が長時間のデスクワークによって不調を感じたことがあると答えており、長時間の座り姿勢やパソコン操作などのライフスタイルが心身に影響をおよぼすことを示唆していると考えられます。
他にも、オーストラリア、シドニー大学のHidde van der Ploeg氏らの研究によると、座位時間が1日合計11時間を超えると死亡リスクが急増、また8~11時間でも1日4時間未満の場合に比べて15%高いことが明らかになっており、座る時間が長いことが単に肩こりなどの症状だけでなくより全身的な健康に関わっていることが明らかになってきています。
こうしたことから、座っている時間を短くすることやストレッチングや休憩を適宜とり血行の改善をうながすこと、運動習慣を身につけ姿勢を改善することなどが肩こりの改善には重要であることが考えられます。