父親になる喜びが強い男性ほど実際に育児している
前述小野寺教授は1998年に「父親になる意識の形成過程」という論文も発表している。そこでも興味深い結果が得られている。- 親になる以前の「父親になる実感」、「父親としての自信」、「父親になる喜び」のうち、「父親になる喜び」が強い男性ほど、実際に親となってから育児に積極的に参加しているという傾向が認められた。
- 経済的・精神的に一家を支えていく負担感、妻の妊娠によって自分の行動が制限されているという意識などの制約感が強い男性は、親になる実感に乏しく、親になる喜びも低い傾向にあった。
- こうした制約感をもちやすい男性は、人格的特徴として親和性と自立性がともに低く、また、自分についてしばしば深く悩んだり自分に起こる変化に敏感に反応する私的自意識が強い傾向が見られた。このことより、親になることに制約感を感じ、親になってからもうまく子どもとかかわりがとりにくい傾向の男性は、私的な自意識が強いので、新しい父親という状況に慣れうまく順応して行くには時間がかかることが予想される。
もし、今ことさら産後クライシスが脅威となっているのであれば、それは夫の無神経とか、妊娠・出産に対する世間の無理解とかいうミクロなことが理由ではなく、夫婦関係以前の基本的な人間関係の構築方法において、十分な免疫がつくられていないまま夫婦になる人が増えており、ただの風邪である産後クライシスに耐えられない夫婦が増えているというマクロな問題を指摘するほうが理にかなっているように思う。