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戸建の延長のように暮らせる「サ高住」事例

今後の超高齢化を受けて大きな期待を寄せられている「住まいの新しい形態」としての「サービス付高齢者住宅」。今後、単身者世帯が標準となる中で、シェアハウスなど高齢者にとどまらない「住まい方」「家づくり」の在り方として注目されます。今回は、現役時代に長く戸建に住んできた高齢者が、その延長線で住めるようなサ付高齢者住宅をご紹介します。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

サ付高齢者住宅と聞くと、ともすると高齢者ばかりの、老人ホーム的な暗いイメージをもたれてしまうのではないでしょうか。しかし、それは一昔前。現在の「サ付」はすべての世代に暮らしやすいユニバーサルデザインや交流の場を備えていたり、子育てファミリーと高齢者が交流する住まいだったり、必ずしも高齢者のためだけの住宅ではありません。むしろ、ここで子育て家族や単身者が学べることは?という視点をもちながら、実際にサ高住を見学してきました。

女性オーナーの想いをこめて

ラウンジ

開放的なロビーラウンジ。ミニキッチンもあり、ここでちょっとしたパーティも開ける

横浜市青葉区。高級住宅地としても知られる青葉台の丘陵地にある「シノン青葉台」(設計施工:積水ハウスグループ)のオーナーは、大手派遣会社テンプスタッフ創業者である、あの篠原欣子さん。パンフレット冒頭にある篠原さんのメッセージが印象的です。「高齢社会の今、シニア世代の方々がより健やかに楽しくセカンドライフを過ごしていただきたい。ますますご自身が主役になれるよう、いつまでも生き生きした日々を過ごせるよう貢献してまいりたいと思います」

サ高住というと、ともすると事業者や企業のイメージがありますが、あくまで土地オーナーがどう土地や資産を有効活用するかが出発点。ですから、サ高住のメインの担い手はあくまで土地や資産をもつ個人であり、個人(オーナー)が個人(高齢入居者)と助け合う。そこに建築事業者や介護事業者がプロとしてのサービスを提供し、高齢化社会の住まいを解決していくスキームには、単なる家賃収入目的だけではない社会性があり期待されている背景なのではないでしょうか。

社会貢献として建てるオーナー増加

プレス発表

「ハウスメーカーが建てるサ高住を知ってほしい」とプレス発表

「かつての土地オーナーはアパートを建ててそこの家賃収入を年金補助目的にするケースが多かったのですが、最近は自分たち夫婦も老後そこに住めて、孤独死防止や単身高齢者の集住、高齢者同士の交流など社会貢献的な意味合いも兼ねて検討されるオーナー様が増えていますね」(同社の医療介護事業部担当者)

では実際に外観から中を見ていくとしましょう。建物の前にはゆったりと屋根のある車寄せスペースが確保されており、タクシーや家族のクルマが移動ツールとなるシニア世代には便利な動線。万一の救急車や介護医療車も複数台とめられる広さが前面に確保されています。

オーナーの篠原さんは「大好きな横浜青葉区に建てたい」と願ったとか。実際、成熟したシニア世代も満足させるオシャレな商業施設や医療施設、レジャースポットは、都市部にあることが多いもの。地方の山林の中ではなく、子育て家族や若者が行き交い、自然に触れ合える都市部にこそ高齢者住宅はあるべきなのかもしれません。

食堂

開放的な食堂。個別の室内でもここでも自由に食事がとれる

外観は、ここがサ高住であることは入ってみなければ分からない、低層3階の瀟洒な高級マンションの風情。「シノン青葉台」という看板プレートも一般住宅マンションと変わらりません。外溝も街に開かれて一体感が出ています。かつての「いかにも老人ホーム」「施設」ではなく、あくまで「優雅な住まい」。健康なアクティブシニアはもちろんのこと、要介護度の高い高齢者も、自分の住まいには誇りをもちたい本質的な気持ちを体現しているかのようです。

次ページでは内観を見ていきます。

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