アメリカの高齢者は余生をどこで暮らす?
欧米では「最期は我が家で」という考え方が文化的に醸成されている
移民受け入れの盛んなアメリカでも確実に高齢化しています。高齢化率は日本ほど急カーブではないにせよ、ベビーブーマー世代の集団高齢化に伴い、高齢者とケアに関する住まいの在り方が注目されています。
米ではケア付きホーム入居は1割
では、アメリカの高齢者はどこでどんな暮らしを送っているのか。ノースカロライナ州立A&T 大学助教受クルーム・洋子氏の2008年レポートによると、米国高齢者の90%は民間の住宅やアパートに居住。残り10%がケア付き住宅とナーシングホームで暮らしています。日本の高齢者と同様、アメリカでも大多数が「余生を自宅で過ごしたい」と希望しており、しかも「高齢者が、要支援・要介護になった場合、自宅で十分なケアを受けられる体制は整っていない」ところも日本の現状と同じです。「The National Clearinghouse for Long-Term Care Information(国立長期介護情報センター)」のHPによれば、要介護者は約950 万人で全人口の3%(日本は要介護者469.6万、4%)。人口に占める割合はそう変わりません。 なのに、日本でいうサポート付き高齢者住宅に入居するのは全体の5%しかいないといいます。アメリカの住宅都市開発省の住宅政策は、低所得者の住宅確保に向けられており、日本の「高齢者住まい法」のような、国主導による高齢者対応の住宅政策も少ないといわれています。
欧州はアメリカよりも高齢化率が高い。なぜ、要介護者数は日本と同じ人口比割合なのに、アメリカや欧米ではそうなのか。一つよく言われているのは、国民性です。「自助=自己責任」とアメリカでは「開拓精神」に基づいて国家形成をしてきた歴史があり、政府も原則的に、個人の生活には干渉しないが基本です。
欧米では「人生は自宅で終える」を軸に介護サービスが普及している(以下アメリカの写真提供いずれも輸入住宅推進協議会)
日本は「転ばぬ先の杖」的に大変なことになる前に、政策でインフラを整備する。欧米は自立を重んじ、病院やホームのベッド数を最低限に抑え、介護が必要になったら事業者サポートを受けられるようにする。ニワトリが先か、卵が先か、お国柄と言ってしまえばそれまでですが、もう一つ興味深いセミナーがありましたので、次ページで紹介します。