中村勘九郎、松坂桃李 旬の若手俳優が勢揃い!
新しい『真田十勇士』
ここ最近の歴史ブームも相まって舞台やゲーム等様々な分野でモチーフにされている”真田十勇士”。大坂の陣から丁度400年後に当たる今年、新年にふさわしい華やかなエンターテイメント大作として新しい『真田十勇士』の幕が開きました。ゴージャスな出演者達
今作のメインは抜け忍びの猿飛佐助(中村勘九郎)と佐助のかつての忍び仲間・霧隠才蔵(松坂桃李)。偶然、紀州九度山で真田幸村(加藤雅也)と出会った佐助は、世の評判とは違い、無口で平凡な男にしか見えない幸村を自らの策と嘘で立派な武将にするべく押しかけプロデュースを買って出ます。そして旧友・才蔵をはじめ、戦の経験豊富な由利鎌之助(加藤和樹)や仕官先を探して諸国を旅する筧十蔵(高橋光臣)ら次々と仲間を集め、「真田十勇士」の存在を世間に知らしめ、幸村を本物の英雄にする為、世の中を相手にした大博打を仕掛けようとするのですが……。
今回の見どころの1つが真田幸村のキャラクター。これまで真田十勇士の頭として圧倒的な力とカリスマ性を持つ武将として描かれることが多かった幸村ですが、今回は「いやー 何だか難しい顔して黙ってると周囲が勝手に色々汲んでくれて……たまたま。」と、過去の武勇伝がほぼ偶然の賜物だったことを飄々と語るちょっとお茶目なNew幸村。加藤雅也さんが凛々しく濃いお顔で語ると「あ、なるほど。」と何となく納得してしまいます。
太陽と月のような関係の佐助と才蔵
そんな幸村を天下の武将にするべく、軽やかに舞台を駆け巡る猿飛佐助を演じる中村勘九郎さん。昨夏の『さらば八月の大地』凌風役とは真逆の、中心に立ちながら物語全体を回していく佐助と云う役をとても躍動的に演じていらしたと思います。歌舞伎の立ち回りがどこか舞踊的であったり、”静”のモードであったりするのに対し、ガンガン動き走り回る今回の殺陣。不慣れだと仰っていたのが嘘のようなキレッキレの動きは流石だと思いました。佐助が天下相手にどんな大嘘を吐いて周囲を動かして行くのか目が離せません!
佐助の旧友・才蔵役の松坂桃李さん。とにかく立っているだけでその場所がキラキラしてしまう華と素直なお芝居に惹かれます。佐助が湧き出る熱量で前へ前へと走って行くのに対し、常に冷静な視線で全体を見ようとする才蔵。太陽と月のような2人の関係性も面白いですし、豊臣方、徳川方という敵同士の立場でありながら、お互いを秘かに想うくノ一火垂(比嘉愛未)との切ないすれ違いにはドキドキさせられます。
戦の経験が豊富でいつも物静かな佇まい……それなのに可愛い所もちょいちょい見せる由利鎌之助役の加藤和樹さんはどこか「ルパン三世」の五右衛門を髣髴とさせるキャラクター。決して大きな声で話している訳ではないのに、どの場面でもきっちり深い所まで客席に届く言葉に打たれます。拝見する度に新しい魅力を感じさせてくれる加藤さんですが、幼い頃から戦場で生きてきた鎌之助……クールなのに人を包み込むような柔らかさもあり、それがとても魅力的でした。
根津甚八と豊臣秀頼の二役を演じる福士誠治さん(同じ人が演じているとは思えない豹変モードに驚嘆!)、真田の家の勘定方として采配を振るう海野六郎役の村井良大さん(二幕、泣けました!)、ある種のカードを握る役回り・筧十蔵役の高橋光臣さん、徳川方の忍び・仙九郎役の石垣佑麿さん等、イケメン振りと共にしっかりした基礎と舞台への想いを持っている旬の若手俳優達の活躍は観ていて本当に気持ちが良いです。石垣さんのティム・バートンばりのメイクと蜘蛛を意識したという忍びの動きはこの舞台のエンターテイメント性を象徴しているようで目が離せませんでした。
映像、ワイヤーアクション、ユーロビート
エンターテイメント大作としての堤幸彦演出
ワイヤーアクションで表現される忍びの術
本作の演出は「トリック」 「SPEC」 「20世紀少年」 「ケイゾク」等、映像の世界で活躍する堤幸彦氏。合戦の絵巻物がアニメーションのように動き出したり、青山劇場の盆を使い、岩場のセットの裏側にプロジェクションマッピングの手法で様々な映像を浮かび上がらせたり、劇中に実況中継のように映像字幕を出したり、忍びの技をワイヤーアクションで表現したりと、舞台ではある種斬新な手法を多用し、派手で華やかなエンターテイメントとして新しい『真田十勇士』を生み出しました。
個人的に、生の舞台で映像が立ち過ぎている作品はあまり好きではないのですが、ここまで映像や字幕を多用している演出だと逆に爽快! 上演中、紗幕を上手に使い、暗転を1度も行う事なく場面転換をしていったのも面白いと思います。ゲネプロ(最終舞台稽古)の際に情報公開となった坂東三津五郎さんのナレーションも素敵でした。
出演者同士のツッコミや小ネタの満載感、物語の中に仕込まれたいくつかの仕掛け、ロックテイストやユーロビートの音楽山盛り(カーテンコールの振りにも注目!)と、幅広い年齢の観客達が難しい事を考えずに戦国エンターテイメントとして楽しめる面も持ちつつ、一幕の上り調子の熱さから、二幕で豊臣方が終焉に向かって行く際の様々な人間ドラマからも目が離せません。
”演劇って何だか難しそう”とか”舞台は何となく敷居が高くって”なんて方にも是非観て頂きたい1本です。日々の寒さでちょっと気分が落ちていても、舞台狭しと走り回る十勇士達の活躍を目の前で観れば必ずテンション、上がりますよ!
観劇初めにも最適! 『真田十勇士』
日本テレビ開局60年特別舞台 『真田十勇士』
■2014年1月7日(火)~2月2日(日) 青山劇場
作 マキノノゾミ 演出 堤幸彦
出演 中村勘九郎 松坂桃李 比嘉愛未 福士誠治 中村蒼 高橋光臣 村井良大
鈴木伸之 青木健 駿河太郎 石垣佑磨 加藤和樹 音尾琢真 加藤雅也 真矢みき
大阪公演あり →公式HP
※休憩時間中、舞台で流れる映像にも注目です!