中村勘九郎×今井翼  さらば八月の大地 開幕!

11月1日に東京・新橋演舞場で初日を迎えた「さらば八月の大地」。昭和19年から20年の満州映画撮影所を舞台に、映画製作に賭ける人々の熱い生き様を描いた本作のゲネプロを初日前日に観劇して来ました! 今回は舞台写真と共にその模様をレビュー形式でお伝えします。

■あらすじ(公式HPより)
一九四四年、満映撮影所。助監督の張凌風(中村勘九郎)と撮影助手の池田五郎(今井翼)は厚い友情を築き、いつか二人で映画を撮ることを夢見ている。だが、初の主演映画に意気込む中国人女優陳美雨(檀れい)、満州の人に喜ばれる映画作りを標榜する理事長高村國雄(木場勝己)など、映画への志を持つ満映の仲間たちも次第に戦争の混乱に巻き込まれていく…。

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満映の全景が描かれた幕


劇場に入ると満映の全景が描かれた紗幕がまず目に入ります。照明によって幕間や転換毎にその色合いを変えるスタジオの風景。中国の荒涼とした大地に建てられた巨大な映画撮影スタジオの雰囲気が強く伝わり客席のテンションもUP!

満映で撮影助手として働きながら、いつか自分が監督になる事を夢見ている中国人の青年・張凌風を演じる中村勘九郎さん。主演でありながら、今回はガンガン前に出るというよりは周囲から飛んでくるボールをきちんと受け止め、物語全体を回していくという難しい役どころ。日本語を喋り出して4、5年の中国人青年と言う微妙なニュアンスの台詞を上手に扱いながら全体をきっちりまとめていく姿がとても印象的でした。凌風として見せる勘九郎さんの笑顔……全てを包んでくれそうで……沁みるんです!

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写真提供 松竹


日本からやってきて、張凌風と強い友情を結ぶ撮影助手・池田五郎を演じるのは今井翼さん。大阪・船場出身の明るいキャラクターを生き生きと演じる姿がとても魅力的。全体的にシリアスな場面も多い中、今井さん演じる五郎が登場すると場がぱあっと明るくなる感じも良かったですし、言葉が滑らかで台詞がとても聞き取りやすい。頑張って役を演じているというよりは、その人物として自然に存在し言葉を発している様子に打たれました。今井さんの関西弁がとてもナチュラルだったので、そちらの出身なのかと思ったら思いっきり関東出身だったのにもビックリ……凄いなあ。

凌風が月だとしたら五郎は太陽……芯になる2人のコントラストがはっきりしていた事が劇中の人間関係に深みを出している要因の1つだと感じました。


歌舞伎、ジャニーズ、宝塚、新派、新劇、小劇場……そして映画
舞台の上のケミストリー

凌風、五郎と共に満映の若手スタッフとして映画製作に関わる脚本家の王国慶。中国人として中国の民の為の映画を作ろうと葛藤しつつ、真面目に喋るとどこかほんわりと可笑しいキャラクターを演じる田中壮太郎さんは新劇の老舗・劇団俳優座の所属。

そして、凌風のかつての恋人であり、現在は満映の理事長・高村(木場勝己)との深い関係を噂される中国人女優・陳美雨を演じる檀れいさんは元宝塚のトップ娘役。劇中では「蘇州夜曲」 「何日君再来」等、舞台では宝塚退団後初となる歌声も披露しています。

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写真提供 松竹


個性的な演技で物語の重要なパートを担う撮影所の衣装係・栗原はつえを演じる広岡由里子さん、映画監督・永澤役の有薗芳記さんは小劇場出身。この他にも新派の鴨原桂さん、中村屋一門の中村いてうさん等、様々な分野からこの作品の為に集結したキャスト達。普段なかなか一緒に舞台に立つことがない俳優陣の競演は見応え十分です。

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写真提供 松竹

劇作は新国立劇場「焼肉ドラゴン」や赤坂ACTシアター「ぼくに炎の戦車を」等で国内外から高い評価を得ている鄭義信さん。 本作「さらば八月の大地」は日中戦争真っ只中の満映と言うある種ハードな設定で描かれているものの、個人的には政治的なアレコレより、”映画を作る”という思いの許に集まった映画人たちの熱い生き様を描いているように思い、またそこに打たれました。

そんな中、特に面白いと思ったのが東京から満映にやってきた映画スター・澤田勇介(山口馬木也)のキャラクター。最初は撮影所で我儘放題に振る舞うスターさんかと思いきや、ふとした時に満映の在り方に対して本質を突いた発言をしたり、当初はケンカ腰だった衣装担当のはつえと恋愛とは違うモードで惹かれ合っていったりと、その存在がとても面白く興味深かったです。澤田が雨のシーンで何度も冷たい水に晒されキレるシーンは最高!

また、他の登場人物たちとは一線を画す立場の満映理事長・高村役を演じる木場勝己さんは、出てくるだけで場の空気をピリッ!とさせてしまう佇まいが流石です。ダンディーな文化人としての顔を持ちながら、底知れぬ恐ろしさや繊細さも秘めている高村の人物像を明確に見せてくれました。

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中村勘九郎さんと演出の山田洋次監督


山田洋次監督の演出は登場人物たちの心情を丁寧に描き出し、日中戦争の末期という歴史的事実に物語が飲みこまれてしまわないよう、「人間」にきっちりスポットを当てたものだったと思います。撮影所のシーンで中国人のスタッフ役の俳優さん達がいつも細かく作業をしている姿が印象的でした。

上のショットはゲネプロの前に行われた囲み取材での一場面。山田監督のファッションがとても素敵!

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写真提供 松竹
 

国や軍部、様々な思惑の許、中国の荒野に作られた巨大な映画スタジオ……満映撮影所。その中でそれぞれの思いを胸に抱きながら”映画”という夢を懸命に追いかけた人々の群像劇。

様々な分野で活躍するキャスト、スタッフが新橋演舞場の舞台で織りなすケミストリーを是非劇場で体感して下さい。

「さらば八月の大地」

作 鄭義信 演出 山田洋次

出演 中村勘九郎 今井翼 檀れい 木場勝己 他

2013年11月1日(金)~25日(月)
昼の部:11:00~ / 13:00~
夜の部:16:00~ / 18:00~
【公演に関するお問い合わせ】
03-3541-2600

新橋演舞場HP




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