骨・筋肉・関節の病気/その他の骨・筋肉・関節の病気

断指…指を切断してしまったときの応急処置・手術・リハビリ

【形成外科医が解説】切断指は指が切断されてしまった状態の外傷です。切断指は血行がない場合、緊急の手術が必要です。すぐに救急車を呼び、治療可能な専門施設を受診してください。切断指の症例画像も含めて解説します。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

 

切断指とは

切断指(せつだんし)とは、なじみのない病名だと思いますが、外傷が原因で指が完全にもしくは部分的に切断された状態をいいます。完全に切断された場合を完全切断、完全でない場合を不全切断と呼びます。不全切断では、皮膚、腱、靭帯、動脈、静脈、神経、骨、関節などの組織が複数損傷をうけています。完全切断ではそれらの組織がすべて切断されています。可能な場合には、その損傷をすべて修復することが理想です。
(【※ 注意】ページ下部で切断指のそれぞれの症例画像を掲載しています。)
骨

指には3種類の骨があります。3つの骨のどこかで切断が発生します。また3つの関節があります。

 
軟部組織

骨以外の腱、神経、動脈、静脈も損傷を受けます。

骨以外では、動脈、静脈、神経、腱が損傷を受けます。

<目次>  

切断指が多い年齢・性別……登山時や仕事中など

運動、事故、仕事などに伴い発生する外傷ですので、あらゆる年齢層に発生します。一般の人にも発生しますが、工場などでの仕事中のケースが大部分を占めます。男性に多い外傷ですが、女性にも発生します。
 

切断指の状態

完全切断の場合、指先が離れた状態となります。切断された指先には血行がなくなり、皮膚が白くなります。

不全切断の場合、動脈が2本切断されて血行がなくなると、完全切断と同じように皮膚が白くなります。動脈が1本でもつながっている場合は血行が残るので、指先の皮膚の色はピンク色や紫色となります。

皮膚以外の骨、腱、靭帯、神経などの損傷に応じた症状が発生します。指の変形、指の屈曲、伸展が制限されること、知覚麻痺などの症状です。
 

切断指の応急処置


完全切断の場合、指先を冷やして病院に運ぶ必要があります。救急隊員が知っている知識ですが、救急車が到着するまでの間に処置ができるのであれば、正しい処置をスタートすると指の保存が可能となります。

切断された指を清潔なガーゼ、布などでくるみます。指とガーゼをビニール袋の中につめ、ビニール袋の頭をしばり密閉状態にします。
ビニール袋を氷水を入れてある容器の中に浸します。冷蔵庫の中に入れてもよいです。
冷凍したり、氷に直接つけたりすると冷えすぎてよくありません。ビニールの中に水がはいると指の細胞がダメージを受けて、これも手術を成功させる阻害となります。
 

切断指の症例画像・診断

切断

完全切断ではない状態ですが、皮膚の色が白く血行がないことがわかります。

まず皮膚の色調を観察し血行の有無を確認します。皮膚の色調が白色であれば血行がないと診断します。緊急手術が必要です。
 
骨露出

切断した指の断面を観察することで損傷部位がわかることがあります。骨が完全に切断されています。


指の断面を観察すると損傷組織がわかることがあります。上記の写真では
骨が完全に離断されていることがわかります。


■単純X線
単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明を受けられるので必ず施行します。
 
X線

単純X線側面像。

 

切断指の手術・治療法……切断指再接着手術

切断指の治療は手術療法です。切断指再接着手術と呼ばれる手術を行います。

損傷部位に応じた手術が必要となり、血行がない場合は血行再建といって切断された動脈、静脈の血管吻合が必要です。高度なレベルの治療ですので、手外科学会認定施設、形成外科学会認定施設を目安に治療可能な病院を探して下さい。
終了時

手術終了時の状態。


上記のケースでは全身麻酔で、骨固定、動脈の血管吻合、静脈の血管吻合、神経吻合2ヵ所の手術が行われました。
鋼線

骨の固定は2本の鋼線で行いました。

術後の経過は良好でした。
 
生着。

手術後、切断指は完全に生着しました。

傷跡もそれほど目立ちません。
 
傷跡

傷跡もそれほど目立ちません。

DIP関節、PIP関節の進展制限はありません。
 
伸転

関節の伸転制限はありません。


DIP関節、PIP関節の屈曲も制限はありません。
 
屈曲

関節の屈曲も制限ありません。

指先でもあり、知覚は完全に回復しました。運動機能、神経機能ともに手術前の状態に回復することができました。もちろん切断の状態が悪いと、このような回復は期待できません。

■鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)を用います。

・ボルタレン……1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性 腎不全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋 筋融解症、脳血管障害胃炎。

・ロキソニン……1錠22.3円で1日3回食後に服用。副作用はボルタレンと同様です。

どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。

■抜釘術
術後に切断された骨が癒合した後に固定具を除去します。抜釘術(ばっていじゅつ)と呼ばれます。
 
骨癒合

骨は癒合して、変形もありません。

 

切断指のリハビリ

早期にリハビリが必要ですが、骨、腱の状態がある程度安定しないとリハビリは開始できません。しかしながらリハビリが遅れると腱の癒着、関節拘縮などが残り指の運動制限が発生します。適切な時期に十分なリハビリを行うことが必要です。専門のリハビリを適切に受けるようにしましょう。
 

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