人工地盤について明確な定義はなく、広い意味では埋立地や盛土造成地、駅前の立体構造物などもこれに含まれるようですが、今回は傾斜地や崖地などに見られる、一戸建て住宅の人工地盤について考えてみることにしましょう。
人工地盤の構造は、コンクリートをしっかりと打ったものや鉄骨で支えるものなどさまざまですが、その強度に十分な注意が必要なことは当然です。建物との位置関係や規模により、建物と一体で建築確認の対象となるもの、工作物として確認の対象となるもの、どちらの手続きも踏まないものなどがあり、一概に安全性が確保されているとは言えません。自治体の条例により、確認の対象となる規模や制限される人工地盤の高さが異なる場合もあります。
一戸建て住宅または土地としてこのような物件を購入するときには、人工地盤が造られたときの関係図面や検査済証をしっかりと調べることが大切です。それらがない場合には、地盤の専門家や建築士などに調査を依頼することも必要でしょう。
中古住宅などで人工地盤そのものが古い場合には、たとえ検査済証などがあってもそれだけで安心せず、第三者に調べてもらうことを考えなければなりません。しかし、人工地盤として比較的多く見られるのは、擁壁の上にせり出した部分を鉄骨などで支える構造のものでしょう。このような場合には、自分の目で隅々まで観察してみることも大切です。
また、崖地などでは人工地盤の下の様子を確認することが困難だったり、雑草が生い茂って地面の様子が分かりづらかったりする場合もあります。このようなときは、もし万一、土の地面に亀裂が入るなどしていても気付きにくいため、購入前に入念な調査をするだけでなく、購入後も日頃から十分な注意をすることが欠かせません。それがジメジメしたようなところなら、衛生面での問題が生じる場合もあるでしょう。
一方で、道路との境界線の上空ぎりぎりまで建物がせり出した構造の住宅もあります。このような場合に、窓やバルコニー、ベランダから物を落とせば、通行人や車に思わぬ被害を及ぼすこともありますから、毎日の生活の上でも十分な配慮が必要です。
また、一般的には「人工地盤である」との認識があまりないかもしれませんが、擁壁を築造してその内側に土を入れた「盛土造成地」も人工地盤の一種です。このような分譲地で地面の締め固めが不十分だと、地盤面の陥没が起きることも考えられます。土地を買って建築をする前に地面が沈み込んだという契約トラブルも比較的多いため、その状態にも気を付けるべきです。
人工地盤とは少し違いますが、崖地を利用して造られた住宅のデッキやテラスが木製の場合もあります。住宅構造部の木材に比べて劣化が早いことも多いため、そのメンテナンスが重要なほか、中古住宅として購入する際には大規模な修繕や、場合によっては造り替えを視野に入れて検討をしなければなりません。
さらに、傾斜地などの人工地盤では隣家との関係についても配慮が必要です。低地に建つ隣家の横に高い人工地盤があれば、圧迫感を与えるほか、その規模や構造によっては恐怖心を抱かせる場合もあるでしょう。思わぬ近隣トラブルへ発展しないようにしたいものです。
傾斜地などの土地は平坦地に比べてかなり安いため、これを買って人工地盤を造ろうと思うこともあるでしょう。しかし、頑丈な構造物を造ったり、弱い地盤に杭を打ち込んだりすることにより、かえって工事費が高くついてしまうこともあります。大地震や大雨などで被害を受けることがないように十分な検討を重ねるほか、周囲の状況なども考慮して判断をすることが大切です。
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