単独と集団、ふたつの敵討ちを描くタランティーノ作品
『イングロリアス・バスターズ』(2009年度作品)
冷酷なランダ大佐(クリストフ・ヴァルツ)に家族を皆殺しにされたショシャナ(メラニー・ロラン)はランダへの敵討ちを狙っています。一方、同時期に、ユダヤ系アメリカ人で結成されたイングロリアス・バスターズは、ナチの皆殺しを行う……というバイオレンス敵討ち映画。
ナチと見れば誰彼かまわず殺していくバスターズは残酷だけれど、どこか間が抜けた愛嬌があり、ちょっとゆるめ。でもショシャナの敵討ちは、ランダのニヤニヤしながら笑顔で人を刺すような残虐さがボディブローのようにジワジワ効いて、怖い怖い。特に二人がカフェで対峙するシーンは「ショシャナが生き残った娘だと気づかれたら……」と、気が気じゃありません。美味しそうにパイを食べながらもショシャナから視線をはずさないランダに背筋が凍りました……。敵討ちはターゲットが強敵ほどサスペンスが強化されると、賢く残虐なナチのランダを見て思いましたね。
監督: クエンティン・タランティーノ
出演: ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、ミヒャエル・ファスベンダー、イーライ・ロス、ダイアン・クルーガー、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガーほか
※敵討ち映画はほかにもいろいろ。『ゴッドファーザー』『マッドマックス』『デスペラード』『ゆりかごを揺らす手』『キル・ビル』『親切なクムジャさん』『黒衣の花嫁』『ブレイブ・ワン』、日本映画の『告白』など。
敵討ち映画が数多く存在するのは、やはり求められているからでしょう。「このやろ」とか「なによ」とか「見返してやる」「やり返してやる」「倍返しだ!」と、誰もが抱きながらもなかなか実行に移せない復讐心、敵討ち願望を映画に託して「やった!」とスカっとしたいのです。
そんなモヤモヤイライラしたときには、ぜひ、これらの映画で敵討ちを達成してくださいね。