芸術と権力 彼が本当に愛したものは…… 『国民の映画』
キャストを一部変えての再演『国民の映画』
2011年3月6日にPARCO劇場で初演の幕を開けた『国民の映画』。1940年代のドイツ・ベルリンを舞台に、三谷幸喜さんが芸術と権力の狭間で葛藤する人々の一晩の物語を時に暖かい目線で、時に冷徹な視線で描いた本作は翌年の2012年、沢山の演劇賞を受賞しました。
2011年3月11日に起きた東日本大震災の影響を受け、都内の様々な劇場でやむなく舞台公演が中止される中、2日間の中止以外敢えて公演を続けた本作をガイドは震災直後に客席で観ていたのですが、たった一夜のパーティーの前後で、人間関係、信頼の有無、社会的立場、築いてきた愛情等、それまでと全てが変わってしまう物語に何とも言えない気持ちが押し寄せ、頬につぅっと涙が伝わったのを覚えています。そして皆が幸せだった頃の様子をまるで絵画のように再現したカーテンコールの演出……更に胸が締め付けられました。劇場を出て見上げた渋谷の街がとても暗かった事……忘れられません。
1940年代のドイツ・ベルリン。ヒトラー内閣がプロパガンダの為に作った宣伝省の初代大臣ヨゼフ・ゲッベルス(小日向文世)。ある晩、彼の家で開かれるホームパーティーに様々な人々が訪れる。ナチスの高官、大女優、映画監督、国民的作家、新進女優……。自分の理想の映画を作ろうと画策するゲッペルスは全ドイツ国民が誇れる映画、「国民の映画」を本当に製作する事が出来るのか。そしてその夜のパーティーにやってきた人々のそれぞれの思惑は一体……。
今回の再演では新しく空軍元帥・ゲーリング役に渡辺徹さん、新進女優・エルザ役に秋元才加さんを迎え、更に高みへと進化を目指す『国民の映画』。戯曲、演出、俳優の素晴らしい化学反応と相乗効果……2014年冬、見逃せない舞台の1本です。
『国民の映画』
■2014年2月8日 (土) ~2014年3月9日 (日) PARCO劇場
作・演出 三谷幸喜
出演 小日向文世 段田安則 渡辺徹 吉田羊シルビア・グラブ 新妻聖子
今井朋彦 小林隆平岳大 秋元才加 小林勝也 風間杜夫
大阪、愛知、福岡公演あり →公式HP
※2014年2月23日更新
→ 群像劇の傑作! 三谷幸喜『国民の映画』開幕リポート
木村伝兵衛対決! 『熱海殺人事件 Battle Royal』
魅力的な若手キャストに注目!『熱海殺人事件』
1974年のつかこうへい事務所設立から2010年にこの世を去るまで、様々な名作、衝撃作を演劇界に送り込んだつかこうへいさん。本作『熱海殺人事件』はつかさんが当時最年少の25歳で岸田戯曲賞を受賞した作品で、キャストや演出、時には設定までも変えながらバラエティに富んだ俳優達によって繰り返し上演されてきました。
演劇界にも熱狂的なファンが多いつかこうへいさんと『熱海殺人事件』。今回この伝説の戯曲で部長刑事・木村伝兵衛を演じるのは、2013年に史上最年少・24歳で同役に挑戦した馬場徹さんとEXILEのKENCHIさん(Wキャスト)。そして犯人・大山金太郎役には3年ぶりのつか作品出演となる柳下大さん。更にドラマ『半沢直樹』等で爽やかな演技を見せた牧田哲也さん、前回からの水野役続投となる大谷英子さんら超フレッシュなキャストの共演に期待が高まります!
シンプルな舞台装置の中、台詞だけで一瞬にして飛ぶ場所と時間。頼りになるのはその役として存在する自らの肉体とつかさんが紡いだ膨大な台詞だけ。俳優が過酷に追い詰められた時、その先に観客が見るのは一体どんな世界なのか……。自らを削る事で輝きが増すつかこうへいさんの戯曲にチャレンジする本作の出演者たちが、つかさんがこだわり続けたホームグラウンド・紀伊國屋ホールでどんな「熱い世界」を見せてくれるのか、注目です!
『熱海殺人事件Battle Royal』
■日程:2014年2月15日(土)~3月4日(火) 紀伊國屋ホール
作 つかこうへい 演出 岡村俊一
出演 馬場徹 KENCHI(EXILE)<Wキャスト> 柳下大 牧田哲也 大谷英子
→公式HP
如何でしょうか。1、2月は劇場から元気がなくなる……なんてジンクスを吹き飛ばす注目の舞台5本をご紹介しました。暖かいお家の中でコロコロ過ごすのも楽しいですが、冬の劇場はあなたの心を熱くしますよ!