7月15日(水)に世田谷パブリックシアターで開幕した『トロイラスとクレシダ』。シェイクスピア作品の中でも”異色作””問題作”とされる戯曲が、文学座・鵜山仁氏の演出+浦井健治さん、ソニンさんをはじめとする魅力的なキャストによって立体化された話題の舞台です。舞台写真と共に、演劇ガイドの観劇レポートをお送りします!

現代に通ずるシェイクスピア作品
『トロイラスとクレシダ』開幕!


トロイラス

(世田谷パブリックシアター 撮影:細野晋司)


トロイラスとクレシダ あらすじ

トロイ戦争が勃発して7年。トロイの王・プライアム(江守徹)の末王子・トロイラス(浦井健治)は、神官・カルカス(廣田高志)の娘、クレシダ(ソニン)に恋焦がれている。クレシダの叔父・パンダラス(渡辺徹)によって秘かに結ばれる二人だが、トロイを裏切り敵国ギリシャ側に付いたカルカスの要望によって、捕虜交換の条件の下、クレシダはギリシャ側に引き渡される。

一方、こう着する戦況を打開しようと、ギリシャ軍の総指揮官・アガネムノン(鍛冶直人)は、ダイアミディーズ(岡本健一)、ユリシーズ(今井朋彦)、アキリーズ(横田栄司)らの将軍たちと共に策を練っていた。そんな中、トロイの英雄・ヘクター(吉田栄作)が、ギリシャ陣営に一騎打ちの申し出を伝えてくる……。

トロイラス

(世田谷パブリックシアター 撮影:細野晋司)


通常のステージスペース中央に緩い傾斜のついた円形舞台が組まれ、更に周囲を城壁に見立てた急な階段状の壁が取り囲んでいるという攻め感満載の舞台装置。天井からは赤と白の巨大な布が吊るされており、シーン毎に結ばれ、敷かれ、たなびかせ……とその都度姿を変えて装置の一部となりつつ場面を作っていきます。

6月に行われた製作発表会見で、演出の鵜山仁さんの口から何度も出た「現代に通ずる物語」というセンテンスですが、実際の舞台を観て本当にその通りだと強く感じました。

分かりやすいポイントでいえば”衣装”。
登場人物たちはアレンジはされているものの、ほぼ現代劇といっても通用する扮装で登場します。質実剛健、父であるプライアム王を中心に戦うトロイ軍はカーキ色の軍服に白地の布。そして自由闊達で個々の個性が光るギリシャ軍の面々は迷彩柄の軍服着用。軍人以外のカルカスやパンダラスはビジネスマンのスーツ姿を思い起こさせる衣装を着ています。

そしてギリシャ軍に捉えられたトロイ人の捕虜はオレンジ色のつなぎ……非常に生々しく、最近の事件を思い出してドキっとさせられました。トロイ戦争の発端ともなったヘレンのビジュアルは、アメリカのセックスシンボル=マリリン・モンローがモチーフになっているのでしょうか。

台詞もシェイクスピア劇らしく、比喩の多用や独特のリズムに満ちてはいるのですが、俳優陣のスキルの高さもあって、全く難解には感じられません。個人的には、映像を使ってトロイ側の息子たちの説明をする際に、ヘリナス役の木津誠之さんの顔写真がトロイラス役の浦井さんのミスリードとして使用されていたのがツボでした。

次のページでは出演者の演技について深堀りします!