里親自身の体験談から見える里親制度の課題
このほど、函館市で「里親フォーラム」が開かれ、里親体験者や児童福祉分野に携わる人たちなどが参加しました。里親体験者が、里子や実の親との関係での悩みや体験を語り、共有できる場となりました。まず語られたのは、それぞれの里親の方が、里親になったきっかけです。「自分の親も里親をしていて、自分自身が里子と一緒に育った」「長年里親をしている方の家庭で、何人もの里子が育てられているのを見たことがきっかけで、家庭を必要としている子がたくさんいることを知った」「子どもに恵まれず、養子縁組を希望して里親になった」など、里親になったきっかけは様々でした。
そして話が進んでいく中で、以下のような具体的な悩みが挙げられました。
里親が抱える悩み……里子と築く親子関係、実親が持つ親権
■里子と新しい親子関係を築く過程での悩み自分には子どもがおらず、養子縁組を希望して1歳5ヵ月のときから幼児と生活を始めた里親。当初は子どもが壁に頭を打ち付けるなど、不安定な様子が多く見られたと言います。大人の愛情を確かめる「試し行動」だったようで、3歳になった今は安定しているそうですが、自分自身も初めての子育ての中で関係をうまく築くことができたことに対して、「1歳5ヵ月という時期はギリギリだったと思う」と振り返ります。子どもが成長して自我が芽生え、周りとの関係を理解できるようになってからでは、里子の意識的・無意識的な葛藤が大きくなるからです。
■実の親ではないがゆえの子育ての悩み
「我が子だったら、夫婦のどちらかに似ている部分などを発見しながら子育てしていくのでしょうが、里子の場合は生まれ持った部分が分からない部分もある。その子をよく知るために、常に注意して見守っている」
「実子3人と里子1人を育てている。実子と里子がけんかをしたときに、『おまえはお母さんから生まれていない』と言ったことがあり、兄弟のように育つからこそ生じる激しい衝突に、どのように対処すればいいか悩む」
など、実の親ではないからこその悩みも、率直に語られました。
■実親の親権との狭間で、里子と信頼関係を築く悩み
子どもが里親に託されるには、親権のある実の親の同意が必要です。急な形で里子が実の親のもとに戻り、その後やはり養育困難で施設に入るというケースを体験した里親は、「信頼関係を築くための里親制度なのに、親権との兼ね合いで築かれつつあった信頼関係がなくなってしまうことがやり切れない」と胸の内を吐露しました。
函館児童相談所地域支援課の野崎耕二課長は、里親制度を含め、実の親が育てることが困難な子どもを支援する「社会的養護」の最終目標は、実の親が再び自分の子を育てて行けるような方向に持っていくことだといいます。その橋渡しという大きな役目を担う里親には、「里子との強い信頼関係を築きつつも、いつかは別れる時がやってくるという覚悟も求められる」と話します。
>>では、里親へのどんな支援が求められているのでしょうか。