苦戦する授業
大学院では、法科大学院や法学部の授業を受けることもできます。そこで、私は研究とかかわりのある法学部の授業、法科大学院の授業をとることにしました。法学部の授業は、仕事があるので背広で受けていました。一番前の席です。目立っていたでしょう。大学院生で実務家でもあります。酷い成績をとるわけにもいかず、何とも言えない緊張感で、10年ぶりの学部テストを受けました。
一方、法科大学院の授業も緊張しました。人生をかけている法科大学院生は、大学生とは雰囲気が違います。司法試験を受験する学生の迷惑になってはいけないと、発表の準備や授業の予習に力を入れました。
しかし、本当に大変だったのは大学院の授業です。現役の大学生だったころは、法学部の一学年だけで1000人を超えるというマンモス校だったので、少数教育を受けたことがありませんでした。一橋では教授1人に院生3人という授業も珍しくありません。ただ聴講して終わるという授業はほとんどないのです。
特に、民事法の教授が一堂に会し、院生が発表する判例評釈の授業の大変さは想像を超えていました。発表の準備に数か月を要するのですから。
多忙な一日
そのころの一日のスケジュールを振り返ってみましょう。まず、朝、起きてメールチェックをし、身支度を整えて、子供を保育園へ連れていきます。一時限目が8時50分から始まるので、急いで駅へと向かい、満員列車にもまれて、国立の駅へと向かい、授業に滑り込みます。二時限目から始まるときは、大学傍のモスバーガーで一息入れてから、授業に参加していました。授業が終わると、図書館で研究や授業のための資料集め、合間に講師の仕事の予習もしていました。昼食をとると、大学を出て事務所へと向かいます。午後、授業があれば、また大学院へ戻ります。
講師の仕事がない日は、そのまま保育園に子供を迎えにいき帰宅です。講師の仕事があるときは、大学や事務所を4時には出て、水道橋や立川へと向かいます。講師の仕事を終えて、帰宅するのは11時過ぎという日々でした。
離れがちになる行政書士業務
明らかにオーバーワークです。大学院が大変なので、行政書士業務から遠ざかっていきます。しかし、そこを狙うかのように厄介な仕事が舞い込みます。出張が重なる仕事でした。個人情報がたくさん入った鞄をしっかりと抱きかかえて、何度、電車の中で落ちるように寝てしまったかわかりません。
疲れ果てて一日が終わり床につくとき、これで研究はうまくいくのか……。漠然とした不安がよぎるようになっていきました。