硝子体手術で飛蚊症治療・改善は可能か
飛蚊症の正体は硝子体の濁りであるというのは、ここまで繰り返し述べた通りです。では最後に、その濁りを化学的な方法で除去するのが極めて難しいならば、物理的に除去することは可能か、という話をしたいと思います。まず手術、正確に言うと、「硝子体手術」で飛蚊症が治るか、という話をしたいと思います。
結論から言うと、可能、です。
硝子体手術というのは、たとえば網膜から出血して、その血が硝子体にひっかかって視力が大幅に低下してしまった硝子体出血の患者さんを対象に、硝子体と、そこにひっかかった血を除去し、視力の回復を図る手術です。他にもいろんなパターンがありますが、共通するのは「硝子体を除去することによって視力の維持や回復を図る手術である」ということです。
こう書くと簡単そうですが、実は眼科の中では一番しんどくて難しい手術のひとつです。
また、非常に難しい手術だからこそ、普段から「糖尿病でぐちゃぐちゃになった網膜が絡まっている硝子体を、網膜を傷つけないように除去しなさい」というような無理難題をこなしているような硝子体手術の術者にとっては、ただ濁りがあるだけの硝子体を除去しなさい、という仕事は、正直なところ、鼻歌が出るぐらい楽なことだったりもします。
ですが……
硝子体というのは、目の中で網膜を押し付けている部分です。教科書的には、生まれてからは硝子体はなくても大丈夫、ということになっていますが、やはりそれまでの押さえがなくなくなるせいか、硝子体手術自体に問題がなくても、術後、数%の患者さんに急激な網膜剥離が発生することがあることが知られています。
もともと先に述べたような網膜出血による視力低下など、治すべき深刻な病気がある場合には、そのリスクを取ってでも、治療を受けた方がよいでしょう。
ですが、飛蚊症でそこまでのリスクを負うべきでしょうか? 患者さんが希望されても、そこまでのリスクを負わせてしまうことを、私たち現場の医師はためらってしまいます。
中には、「いえ、自分は何があっても後で絶対に文句を言いません。頼みますから手術をしてください」と、非常に強く手術を希望される患者さんもいます。
しかし、私たちのように実際に多くの外科手術を行っている臨床の眼科医は、そういった患者さんの言葉に何度も痛い目にあっている……という現実もあるのもまた事実です。多くの症例を見ている医師が事前にお話するリスクの大きさを、皆さんにもわかっていただければと思います。
レーザー治療による飛蚊症治療・改善は可能か
最後に、レーザー治療で飛蚊症が治るか、という話をしたいと思います。結論から言うと、可能、というか、軽減可能のようです。
実際に、アメリカではだいぶ前からこの方法が取られていて、「アメリカでの治療で飛蚊症が軽減した」という話が複数寄せられています。
簡単に言うと、濁りをレーザーで砕くのです。細かくなるため、濁りが消えるわけではないものの、だいぶ気にならなくなる、という作戦です。
ただ、自分が現場で見たわけではないため、この話に関しては今はここまでとさせてください。後日、また発展させることができるかもしれません。