スイス生まれの画家が描くクリスマス絵本
さて、スイスのクリスマスはと言えば、こちらも日本とは違い、クリスマスツリーの飾りつけをするのも、プレゼントを届けるのも、サンタの使者であるクリスキンドリ(小さなキリストと呼ばれる妖精のような存在)であると考えられているそうです。まずは、そんな可愛いおとぎ話のような世界を体験できるクリスマス絵本をご紹介しましょう。
■サンタをのせたクリスマス電車
最近は日本でも見かけるようになったクリスマス電車ですが、この絵本に描かれたそれは、ため息がでるほど美しく、サンタの衣装に身を包んだ子どもたちもとても愛らしくて、思わず笑みがこぼれます。しかも、よく見れば、夜の空から舞い落ちる雪は、その高さによって微妙に色が変わっていくという繊細さ。こんな表紙の絵を見れば、大人だってうっとりとしてしまいます。
ドイツの作家クレンツァーのお話に、スイス出身のジタ・ユッカーが絵を添えました。綺麗な表紙に一目ぼれという方も多いでしょうが、常に家族や友人を思いやる主人公ベアーテの姿も心を打ちます。絵とお話がピッタリとはまった、優しい優しいクリスマス・ストーリーです。
詳しくはこちらから → そこはまるで夢の国『サンタをのせたクリスマス電車』
最後は、実際のエピソードをもとに作られた歌物語を原作とする絵本をご紹介しましょう。クリスマスに起こった小さな奇跡を描く物語に、スイス生まれの画家アルブレヒト・リスラーの優しい絵が添えられた、静かで穏やかな作品です。
■魔法の夜
何と素敵な絵本に出会ったのだろう…… 初めてこの絵本を読んだとき、そう思いました。題名から、魔法にあふれた聖夜のファンタジーを期待する読者には申し訳ありませんが、このお話で魔法が使われることはありません。それでも、これほどファンタジックな物語が紡がれていくことに、驚きを隠せなかったのです。
凍てつくようなクリスマスの夜。貧しい老人に寄り添うのは、小さな犬の姿を借りた魔法使いでした。魔法使いが願いを叶えてくれるお話はたくさんありますが、この魔法使いは、魔法を使わずに、老人にクリスマスの奇跡を起こしました。ホグワーツ(※)を卒業しなくても、こんな素敵な魔法のような方法で誰かを幸せにすることができるなんて…… 読み終わって絵本を閉じた後、心の中にポッと灯がともり、身体中に広がっていくような温かな余韻を感じます。
詳しくはこちらから → シャンソンの調べに乗って届いた絵本『魔法の夜』
※ ホグワーツとは、『ハリーポッターと賢者の石』で主人公が入学した名門の魔法学校の名前。