行政書士試験/行政書士のキャリア・開業

資格取得後の独立体験記 第16回「苦悩の道」(2ページ目)

誰しも多かれ少なかれ仕事に対し悩みや不満を抱くと思います。ときに、転職や退職を考もするでしょう。今回は、行政書士開業をして5年あたりに訪れた深刻な苦悩のお話です。

山本 直哉

執筆者:山本 直哉

行政書士ガイド


感情的な妻

離婚の主たる原因は不貞行為です。浮気した夫を許せないという気持ちはわかりますし、離婚後、もう夫と顔を合わせたくないという気持ちも理解できます。

だからといって、「二度と顔もみたくない」という自分の気持ちを優先して、「養育費はいらない。子どもにもあわせない」と主張するのは正しいことでしょうか。妻は自分の感情を優先して、子供の利益を考えているでしょうか。

子どもが父親をそれほど嫌っているとは限りません。母親をおもんばかって、ただ母親に従っているだけかもしれません。いずれにせよ、子の利益を考えれば、養育費の放棄は許されないと私は思います。

しかし、そういった疑問を抱いたとしても、行政書士は仕事をしなければなりません。

閉ざされる子の将来

アメリカでは、養育費の不払いがあると、運転免許の更新ができない州もあります。日本は違います。成人に達するまで養育費を支払う父親は、全体の2割程度でした。あまりにも酷いので、法改正が行われ、養育費の給料天引きが可能になったのです。

母子家庭は、平均年収200万前後で、経済的苦境に陥ります。進学を諦め、将来が閉ざされていくのです。事実、それを裏付ける統計資料もあります。

協議離婚の合意に養育費の定めがなくても、養育費が低額であっても、合意がある以上、行政書士は何もできません。自分の作成した書類が、子の未来を閉ざすとしても、依頼を受けた以上、作成するしかないのです。口を挟むことは許されません。

募る苦悩

契約は、当事者が平等でなければ、その結果を正当化できません。しかし多くの離婚協議では、妻が不利な立場に置かれています。離婚後に法律家に相談しても、離婚協議書がある以上、「最終的に合意したのでしょ」という言葉が、返ってくるだけです。

こうして苦悩だけが積み重なっていったのです。

おとずれた限界

両親の離婚に直面した子ども達は親の変化を敏感に感じ取り、ふさぎこみや夜泣きなどの影響が出ることもあります。

ある日、離婚の仕事で子供に会いました。私はその子どもをみながら案じずにはいられませんでした。

そのとき、子どもと眼があった私はふと思ったのです。「私は子ども達の目にどのように映っているのか」と。そのことが頭から離れないまま、仕事の帰り道に何とも言えない限界を感じたのです。

最後に

思い悩んだ私は、清流をもとめて、彷徨うことになります。次回は、「社会人大学院生への道」です。
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