今注目!演歌JACKS
2013年11月13日、いま関西ローカルで大きな注目を浴びている音楽番組『演歌JACKS』(奈良テレビなど)の公開収録現場を取材した。トーク収録
会場は奈良県中部に位置するショッピングセンター、レインボー西大和。
けっして都会とは言えない最寄駅からさらにタクシーで5分以上かかる立地だが、事前に番組スタッフの方に聞いた話だと、公開収録の日には中高年の方たちで館内があふれかえるとのこと。
僕が会場入りしたのはリハーサル(リハーサルももちろん公開)が始まったばかりの午前11時。
リハーサルにもかかわらず、たしかにステージ前は普段目にしないほど大勢の中高年の方でごったがえし、異様な熱気を醸し出している。
大勢の中高年であふれかえる客席。これが8時間続く
グループで席を確保してお目当ての歌手を一心不乱に見つめる人、所在なげにフラフラと店屋とステージを往復する人、歌手が入れ替わるたびに「イヨッ!待ってました」などと叫ぶ人……ノリはオールドウェーブだが、ある意味で新鮮だ。
まとめ撮りは大変!公開収録ならでは臨場感
今回の収録は数回分をまとめているため、非常にあわただしく、長丁場。司会の小池史子さん、ファンキー・こばさんはほとんど出づっぱりで、若松秀彦さん、五十嵐潤さん、池田かよこさんなどレギュラー出演者が入れ替わり立ち代わり衣装を替えてステージに上がっていく。司会の小池史子さん、ファンキー・こばさん
レギュラー陣のトークはいかにも打ち解けていてアットホームな雰囲気
湯原昌幸さん登場!
歌録り、トーク録りを繰り返し、ほどよいタイミングで水沢明美さん、湯原昌幸さんらスペシャルゲストの登場。GS出身演歌歌手!湯原昌幸さん
個人的に湯原昌幸さんは好きなので『雨のバラード』、新曲『ないものねだり』を間近で聴けたのはとっても役得だった。
人格者と噂の湯原さん。トークも妙を得て面白い
湯原さんのボーカルスタイルは、もともとグループサウンズ『スウェイング・ウエスト』ということもあり、リズム良く、力強い。演歌なんだけどポップスやロック音楽としても捉えられる、このミクスチャー感こそ"歌謡曲"なんだよなぁと一人うなづく中将タカノリ。
ホットな番組のつくりかた。楠本佳生インタビュー
この日は約6時間という比較的長い取材時間だったが、現在進行形の演歌の現場で、数多くのアーティスト、タレント、製作スタッフに触れることができ、退屈することがなかった。また、お客さんたちも観覧はもちろん、贔屓の歌手に話しかけたり友達同士で演歌談義に興じたりと、非常にアットホームに楽しんでいるのが印象的だった。
『演歌JACKS』はどうのような想いで制作されているのだろうか。
番組チーフプロデューサーの楠本佳生さんにお話をうかがった。
楠本佳生さん
楠本佳生
プロフィール
株式会社メディアジャックス チーフプロデューサー
1975年 香川裕子(歌手。第九回全日本有線新人大賞など)のマネージャーとしてキャリアをスタート。
芸能界のパイプを活かし、1990年代から音楽番組制作にも進出し現在に至る。
これまでの代表作に『関西演歌祭り』『東南アジア紀行』など(どちらもテレビ大阪)
チャンバラトリオの南方英二は叔父。
ガイド:『演歌JACKS』はいつから放送スタートしたんでしょうか?
楠本:去年の2月からだったかな。それまでにもいろいろ演歌の番組やってたけど、『演歌JACKS』としてはまだ二年目です。
ガイド:反響はいかがでしょうか?
楠本:おかげさまでね、開始早々、驚異的な視聴率をあげたんですよ。
『演歌JACKS』は奈良テレビでお昼2時からの放送なんですけど、他の曜日の同じ時間枠に放送されてる競馬中継とか長山洋子さんの『洋子の演歌一直線』をぶっちぎって、業界内ではいきなり"画期的な演歌番組"として注目されることになったんです。
特に競馬中継を上回ったのは僕にとっても前代未聞でした。
ガイド:初めからそういう自信があったり、仕掛けがあったりしたんでしょうか?
楠本:いや、そういうのはまったくなかった。
ただ、奈良県と言うのは他の関西二府四県よりも、演歌が根強い地域だということは幸いしたのかもしれないです。
蓋をあけたらそういう結果で、奈良テレビもびっくりしていた。ありがたいですね。
ガイド:番組のコンセプトというものはどうお考えでしょうか?
楠本:ここ関西と言う土壌ならではの一体感を大事にしています。
東京の番組制作って、いかにも作ってる感じがするじゃないですか。
うちが基本的には無料で公開収録をやってるのは、歌手と雑多なお客さんがふれあう、なごやかな空気感を演出したいからなんです。
今回の湯原昌幸さんみたいなスター歌手の方にもその中で歌っていただいてる。
番組のコンセプトを理解して、お客さんとフレンドリーに接していただける方でないとオファーしていない。
これがよその番組だと、スター歌手だけはお客さん帰らせた後に収録してたりするんですね。
うちの場合はそういうことはしない。
ガイド:近年の演歌業界についてどうお考えですか?
昔は音楽番組も演歌、ポップス、ロックが入り乱れていましたが、最近はどちらかというと住み分けが進んできているように感じます。そのあたりになにか思われることはありませんか?
楠本:そうだね。J-POPは東京中心に発信されていて、勢いもあるから同じ土俵で勝負するとしんどい。
番組作りだけでなく、宣伝を重視する地域という面でも住み分けは進んでいると思います。
昔から「演歌をヒットさせるなら関西、四国、北陸から火をつけろ」って言われていて、歌手が新曲キャンペーンをする時は、この地域を非常に大切にしています。
ガイド:同じ音楽業界でも、やはり演歌ならではの事情というものもあるんですね。
では近年の演歌の楽曲についてはどうお考えですか?
楠本:うん、これはかならずしも良い傾向ばかりじゃないと思います。
昔にくらべると"後世までのこるような名曲"はかなり減ってきていますね。
だから、ミリオンセラーなんてまず無い。
ガイド:どういった原因があるんでしょうか?
楠本:"定期的にシングルを出してキャンペーンで全国回る"っていうシステムが、あまりにも形式的なものになりすぎて、一つ一つの曲のクオリティーを高める方向に向いていない。
ただでさえCD不況の時代だから、製作費の問題もあるのかな。
ガイド:CD不況というのが、音楽業界全体に大きな影響をいろんな影響を与えているようですね。
しかし、逆風の中にもかかわらず注目を浴びている『演歌JACKS』は、既存の演歌番組とは一味違う魅力を作ることに成功されているということなんでしょうね。
今回の公開収録を観させていただいて、個人的にも感じる部分がありました。
今後の番組の目標などはどうお考えですか?
楠本:番組からどんどん新しく良い歌と歌手を送り出していきたいですね。一緒に番組を作るものとして、そういう親心はあります。
それと、幸いなことに番組が注目されてきているので、もっとスポンサーについていただいて、いろんな部分にお金をかけていきたいですね。現状に満足はしてない。上を向いていきますよ。
ガイド:ありがとうございます。
いかにしてファンに愛され、良いものを作っていくか。従来の演歌業界のマイナス点を冷静に分析し、歌手の育成も込みで演歌界を新しい方向に発展させていこうという情熱をひしひしと感じた。
今後もこのコーナーでは『演歌JACKS』の展開を追っていこうと思う。
『いい男!いい女!』の林よしこさんとツーショット
楠本さんのインタビューの合間に、今回の収録にも出演されていた林よしこさんとツーショット写真を撮ってしまった。林好子あらため林よしことして再デビュー!
我ながらミーハー……
林よしこさんは大ヒットしたデビュー曲『いい男!いい女』(島津ゆたかとのデュエット。1994年)のあとほどなくして歌手活動を休止していたが、今年、19年の沈黙を破って『春を抱いて眠りたい』で復帰!
『いい男!いい女!』はけっこう好きなデュエットナンバーだったが、実際に実物とお会いすると思いのほか素敵でチャーミングな方でした。
がんばってください!