日本よりも米国が強く反応した175球
田中自身が志願し、星野監督が容認しての“175球”。これに米国が強く反応した。ニューヨーク・タイムズ紙は「メディカルチェックの必要性」を誌面で訴えている。
11月3日(日本時間4日)付けのニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は、「田中の175球」として大きく取り上げた。それによると「獲得を目指す球団は、不安を募らせている」とし、その理由を「(メジャーでは)通常160球を投げることは認めないし、登板翌日に投げることも認めていない。だが、日本では考え方が違う。どの球団が交渉権を得ても、詳細なメディカルチェックが必要」と報じた。
2001年以降のメジャーリーグにおける、1試合の最多投球は、2005年のリバン・ヘルナンデス(ナショナルズ)が投じた150球で、2位は2002年のランディ・ジョンソン、2010年のエドウィン・ジャクソン(ともにダイヤモンドバックス)が投じた149球。ポストシーズンを含めても、21世紀に入って1試合160球を投げた投手は1人もいないのだ。タマ数が多いとされるダルビッシュ(レンジャーズ)は今季、5月16日(同17日)のタイガース戦で130球(2012年は123球が最多)を投げているが、全32試合(209回2/3)の登板で1試合平均107.84球だった。
こうなると心配なのは、田中の肩とヒジの回復具合である。先発投手は完投すると、腕の毛細血管が切れて腫れ上がり、痛くて眠れないほどだという。また、田中はシーズンとクライマックスシリーズと2度リリーフ登板して“胴上げ投手”となったが、いずれもその直後にフォームのバランスを崩したといわれている。そして、日本シリーズの160球完投のあとに連投での15球は、我々が思っている以上に負担がかかっているに違いない。
田中はまもなく締結されるであろう新ポスティング・システムにより、海を渡るのは確実視されている。すでにヤンキース、ドジャーズ、エンゼルスを始め、レッドソックス、カブス、メッツ、レンジャーズ、マリナーズなど計14球団が興味を示しているといわれ、その落札額は、2006年の松坂の約5111万ドル(約60億円=当時)、一昨年のダルビッシュの約5170万ドル(約40億円=当時)を凌ぐ1億ドル(約99億円)に達するのでは、といわれている。
今回の“175球”が田中にどういう影響をもたらすのか。星野監督は倉敷秋季キャンプ、アジアシリーズ(11月15日から20日)に田中を参加させない方針を明らかにしたが、この休養期間でも水面下では激しい動きが展開する。