足元では欧州株の上昇が際立つ
2012年末からの株式市場の騰落率は、日本が36.6%と際立っていますが、スイス20.5%、米国19.2%、ドイツ18.3%、フランス17.4%などと先進諸国はいずれも堅調に推移しています。さらに、ギリシャ29.7%、スペイン20.5%という騰落率をあげると驚かれる人が多いかもしれません。直近3ヵ月では、先にあげたスペイン、イタリアの株価指数の騰落率が15%前後に達しているのです。ドイツの株価指数DAXは、終値で初の9000台に乗せ過去最高値を更新しているのです。
欧州債務危機が市場の波乱要素と幾度となく言われていたのは何だったのか、と疑問が残るほどの株価の上昇率と言っても過言ではないでしょう。ECB(欧州中央銀行)による大胆な金融緩和により、低金利を背景とした将来の企業業績の回復を期待する金融相場、いわゆる「不景気の株高」となったのだと考えられます。
欧州景気は緩やかに改善
失業率こそ12%近辺に高止まりしていますが、欧州景気は緩やかながらも着実に回復しているようです。2013年第2四半期(4月~6月)のGDPの成長率は前期比0.3%と2012年第2四半期以来のプラスに転じているのです。また、ユーロ圏の製造業購買担当者景気指数が大幅に改善していることも見逃せません。同指数は、主な製造業者から現在の景気についてのアンケート調査を集計したもので、50を基準に判断が行われます。50を上回れば景気拡張(好景気)、50を下回れば景気後退(不景気)と見なされます。
2012年10月のユーロ圏製造業購買担当者景気指数は、45.4と不景気の水準でしたが、1年後の2013年10月の同指数は51.3と景気拡張の水準まで回復しているのです。
ただ物価が下落傾向にあるのは気がかりです。2013年10月の消費者物価指数は対前年比0.7%の上昇とECBが考えているほど上昇していません。1%を下回るのは2010年2月の0.9%以来のことです。プラスに取れば、ECBがさらなる金融緩和にアクセルを吹かす=株式市場の金融相場が続くと考えられますが、マイナスに考えればユーロ圏がデフレに陥る懸念が出てきた=株式市場の低迷と考えることもできます。
欧州株ファンドの運用成績は良好だが?
2013年9月末現在の過去1年の騰落率は、インベスコ投信投資顧問「欧州エクイティファンド」70.6%、JPモルガン・アセット・マネジメント「JPMヨーロッパ小型株ファンド」69.7%、フィデリティ投信「フィデリティ・欧州中小型株・オープンBコース(為替ヘッジなし)」63.4%など。他の欧州株ファンドも平均すると1年間の騰落率は概ね50%前後となっています(定期決算型、特定地域型などを除く)。好成績の背景は、欧州株が堅調に推移したことに加えて、為替が円安/ユーロ高となったことも要因と考えられます。しかしユーロ高は、欧州の輸出企業にとってはマイナスに働くことを忘れてはなりません。これまでユーロがさまざまな通貨に対して安値水準であったため輸出が伸びたと考えられ、足元のようなユーロ高の水準ではこれまでのように輸出を伸ばすことができなくなる恐れがあるのです。
事実、ユーロ圏の輸出企業の一部ではユーロ高要因として、2013年の企業収益の見通しを下方修正する企業も現れ始めています。ユーロ圏の景気回復が緩慢である限り、企業収益は外需頼みという側面が強くなるのは否めません。企業業績の持続的な成長が期待できなければ、株式の上昇にブレーキがかかり、引いては欧州株ファンドの運用成績も一転して低迷する可能性もありえるかもしれません。