子育てのために何もあきらめない50のアイデア
皆さんは、壁の角に足の小指を引っかけて痛い思いをしたことはありませんか。「+Child First の家」では、例えば壁の角に丸みを持たせることで、そうならないように配慮しています。このほか、ドアを閉めるときに指を挟み込まないように工夫された「フィンガーセーフドア」なども採用されるそう。さらに、室内空気質の改善を目的とした空気清浄ユニット「換気浄化ef(イーエフ)」、子どもの成長に合わせて間取りを変えられる「リンクストレージ」など盛りだくさん。残念ながら取材をした時点では、この「+Child First の家」のモデル棟は出来上がっていませんでしたが、完成した折には是非、一度見学されるといいのではないでしょうか。
ところで新興住宅地の開発において、「子育て」をテーマにすること自体は、実はそう珍しいことではありません。本当に遠隔地で「永住」をテーマとしたシニア向けの街づくり案件もないではありませんが、そういった事例は非常にまれ。特に今回のような大型の街づくり案件では、ほぼ例外なく「子育て」を中心に開発が進められます。
という部分をご理解頂いた上で、改めて皆さんに問いかけたいことなのですが、では「子育て」をテーマにした街づくりは本当に正しいことなのでしょうか。そこに問題点はないのでしょうか。実は、この点は新興住宅地に新たな住まいを求める方々に、常に意識しておいて頂きたいことなのです。
というのは、過去の事例がその危険性を示唆しているからです。例えば、かつて「ニュータウン」と呼ばれる街づくりが、我が国の至る所で行われました。それが現在、どのようになっているのか、皆さんはご存じでしょうか。今、大きな問題を抱えているのです。
分譲地選びには将来の街の高齢化に対する考慮も必要
このようなニュータウンは同じ時期に同じような世代の人たちが住み始めます。そうすると、同じような時期に住民全体が高齢化してしまうわけです。そうなった場合、街は高齢者ばかりが住んでいることになります。現在、各地にこのような街が増えてきて問題になっているのです。何が問題かというと、高齢者ばかりになるとコミュニティの運営が難しくなります。町内会などの活動が維持しづらくなりますから、それは例えば消防や防犯などの面で街の力が弱くなる可能性があるのです。街に若者が減るということは、要するに街に活気がなくなるということですね。
そして何より問題なのは、そうなると街全体の資産価値が下がってしまう可能性があるということです。高齢化して過疎化が進むと、住民自治の機能が損なわれて街の手入れに配慮が行き届かなくなるからです。そうなれば、資産価値の低下は免れません。
ですので、皆さんはこのような長期的な視点を持って、新興住宅地を選ぶことが大切になるのです。「子育て」というテーマの重要性は否定しませんが、それだけを考えていると将来的に大きな不自由に遭遇する可能性があるということです。そして、このことは住まいをどこにするかという問題に留まらず、どんな住まいを建てるかということにも、当然関連してきます。
かつてのニュータウン開発に関する説明は、要するに「売っておしまい」という開発がまかり通ってきた時代の話。「IKUMACHI吉川美南」は大和ハウスグループなど様々な人たちがアイデアを出して、今後の街づくりとその運営を行っていくといいます。
大和ハウスがこれからどのように取り組んでいくのか注目されますが、一定の安心感はあるように思います。また、「子育て」への配慮がある街は、高齢者にとっても住みやすいといえますから、その点でも街のポテンシャルは高いとも思われます。ただ、私は皆さんにはこのような長期的な視点も持って住まいづくり、街選びを行って頂きたいと思います。