今回は子育て世代を支援するという街づくりの話題です。郊外型の新興住宅地の開発では、よく「子育て世代が住みやすい街です」などといったキャッチフレーズが使われるのですが、では一体、どのような点が子育て世代にとって住みやすいのでしょうか。先日、私は大和ハウス工業が開発をスタートした「IKUMACHI(育まち)吉川美南プロジェクト」(埼玉県吉川市)を見学してきましたので、この街づくりを事例に考えていきたいと思います。

大和ハウスが開発する全戸ZEHによる戸建て街区

まず、この街づくりの内容について少し詳しくご紹介しておきたいと思います。特徴の一つは、JR武蔵野線「吉川美南駅」前エリア(総開発面積約16平方メートル)における、住居や、商業施設、医療・保育施設をあわせた大型複合プロジェクトであるということ。

吉川美南空撮

「IKUMACHI吉川美南」の開発地。新駅JR「吉川美南」に隣接する広大なエリアに、戸建て・マンション・賃貸からなる1400戸以上の街なみが形成されるという(写真は大和ハウス提供。クリックすると拡大します)

住居部分は、戸建住宅(270区画)・分譲マンション(984戸)・賃貸住宅(15棟)で構成され、合わせて約1400戸の規模になる計画で、これは大和ハウスにとっても近年まれに見る大型の街づくり案件となります。

「吉川美南駅」は2012年3月に開業した新駅で、現在は駅周辺は開発が始まったばかり。ですが、そのような立地であっても、開発者である大和ハウスが責任を持って、商業施設や保育施設、医療施設を誘致して、住民にとって住みやすい環境づくりを行うということが大きなポイントなのです。

そこが、一般的な新興住宅地の開発とはひと味違うところ。このようなことは、総合力のある開発者ではないとできません。また、大型ショッピングモールなどがある「越谷レイクタウン駅」や「新三郷駅」などが近くにあることもあり、今後、人口の集積が見込まれ、利便性が大いに向上することが予想されているエリアともいえます。

ちなみに「IKUMACHI吉川美南」の戸建て街区「スマ・エコ_シティ吉川美南」は、全戸に太陽光発電システム、家庭用蓄電池、HEMS、燃料電池を搭載するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)になる予定。大和ハウスでは2ヶ所目のスマートタウン開発で、最大規模となるそうです。

「IKUMACHI憲章」で街全体で子育てを支援

もう一つの特徴は、いうまでもなく「子育てを応援する」街づくりを行うということですが、その旗振り役としておちまさと氏にまちの総合プロデューサーとして就任していることがあげられます。おちさんは、厚生労働省「イクメンプロジェクト」の推進メンバーをされています。

戸建て街区の様子

戸建て街区の様子。屋根には太陽光発電システムが見える。全区画がHEMSと蓄電池、燃料電池を備えたZEH仕様になる計画だ(クリックすると拡大します)

では、具体的にどのような点が「子育てを応援する」ことなのでしょうか。戸建て街区を中心に見ていこうと思います。まず、街全体の構成がそう。ここでは「IKUMACHI憲章」という大きなルールの下、開発が行われるといいます。この憲章についての詳しい説明は省きますが、大きく「チャイルドファースト」「まち全体で育てよう」「シェアする子育て」の3点で構成されています。

子育てというのは何かと大変。現在、多くの子育て世代は共働き世代だったりしますからなおさらです。ですので、街全体でアイデアを出して、子育ての喜びや悩みを共有していきましょうという考え方なのだと思います。しっかりとした新興分譲地の場合、街のルールづくりを行うケースが多いのですが、「IKUMACHI吉川美南」にはその根底に子育てがあるのです。

で、より具体的な事例を見ていくと、例えば街区の構成にも配慮が見られます。各街区の主要な入口には自動車が速度をあげて走らないよう工夫されています。これは子どもをベビーカーで運ぶ際や、子どもが大きくなって道路で遊んでも安心ですよね。緑の育成にも力を入れており、これは住民同士のコミュニケーションを促す配慮です。

宅地内には菜園スペースも。これも共同作業から家族のふれあいや会話が生まれるきっかけとなるものです。植物・野菜を育てることで子どもが成長する中で、自然を大切にする心を育み、食育にもつながるといいます。また、各住戸には「おやこベンチ」というものもあり、これは親子や兄弟、友達との交流の場となるはずです。

要するに「子育てを応援する街」である以上、住宅や建物だけがそうであっては不十分ということで、道路や外構にまで配慮が必要ということです。次のページでは、建物内部についての話から、この街の特徴を見ていきます。