ハウスメーカー・工務店/ハウスメーカー最新トレンド

「子育てを応援!」から考察する分譲住宅の選び方(2ページ目)

最近、ハウスメーカーなど住宅事業者が分譲住宅の販売に力を入れています。しかし、その内容や質は様々。私たち消費者はどのような点に考慮して、新居選びをすればいいのでしょうか。今回の記事では「子育てを応援する」というコンセプトで開発が進められている分譲地を事例に、そのことを考えます。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

ハウスメーカー選びガイド

「IKUMACHI吉川美南」の戸建て街区の開発にあたり、大和ハウスでは新たに「+Child First の家」というコンセプトを打ち出しています。これは前述したおちさんと共同開発したもので、「子育てのために何もあきらめない」ということをテーマとし、子育て環境と親の住まいに対する好みや住まい環境を両立させる50の「隠された子育てアイデア」を採用したものです。

子育てのために何もあきらめない50のアイデア

皆さんは、壁の角に足の小指を引っかけて痛い思いをしたことはありませんか。「+Child First の家」では、例えば壁の角に丸みを持たせることで、そうならないように配慮しています。このほか、ドアを閉めるときに指を挟み込まないように工夫された「フィンガーセーフドア」なども採用されるそう。

戸建て内部の様子

戸建て住戸内部の様子。今後、「+Child First の家」のコンセプトに基づく設計や提案が盛り込まれ、子育て世代にとって快適な住空間を形づくっていく(クリックすると拡大します)

さらに、室内空気質の改善を目的とした空気清浄ユニット「換気浄化ef(イーエフ)」、子どもの成長に合わせて間取りを変えられる「リンクストレージ」など盛りだくさん。残念ながら取材をした時点では、この「+Child First の家」のモデル棟は出来上がっていませんでしたが、完成した折には是非、一度見学されるといいのではないでしょうか。

ところで新興住宅地の開発において、「子育て」をテーマにすること自体は、実はそう珍しいことではありません。本当に遠隔地で「永住」をテーマとしたシニア向けの街づくり案件もないではありませんが、そういった事例は非常にまれ。特に今回のような大型の街づくり案件では、ほぼ例外なく「子育て」を中心に開発が進められます。

という部分をご理解頂いた上で、改めて皆さんに問いかけたいことなのですが、では「子育て」をテーマにした街づくりは本当に正しいことなのでしょうか。そこに問題点はないのでしょうか。実は、この点は新興住宅地に新たな住まいを求める方々に、常に意識しておいて頂きたいことなのです。

というのは、過去の事例がその危険性を示唆しているからです。例えば、かつて「ニュータウン」と呼ばれる街づくりが、我が国の至る所で行われました。それが現在、どのようになっているのか、皆さんはご存じでしょうか。今、大きな問題を抱えているのです。

分譲地選びには将来の街の高齢化に対する考慮も必要

このようなニュータウンは同じ時期に同じような世代の人たちが住み始めます。そうすると、同じような時期に住民全体が高齢化してしまうわけです。そうなった場合、街は高齢者ばかりが住んでいることになります。現在、各地にこのような街が増えてきて問題になっているのです。

木造の施工現場

「IKUMACHI吉川美南」には、大和ハウスが最近力を入れている木造住宅も建設されている。そういった意味でも、見学すれば同社のことがよく分かる分譲地だ(クリックすると拡大します)

何が問題かというと、高齢者ばかりになるとコミュニティの運営が難しくなります。町内会などの活動が維持しづらくなりますから、それは例えば消防や防犯などの面で街の力が弱くなる可能性があるのです。街に若者が減るということは、要するに街に活気がなくなるということですね。

そして何より問題なのは、そうなると街全体の資産価値が下がってしまう可能性があるということです。高齢化して過疎化が進むと、住民自治の機能が損なわれて街の手入れに配慮が行き届かなくなるからです。そうなれば、資産価値の低下は免れません。

ですので、皆さんはこのような長期的な視点を持って、新興住宅地を選ぶことが大切になるのです。「子育て」というテーマの重要性は否定しませんが、それだけを考えていると将来的に大きな不自由に遭遇する可能性があるということです。そして、このことは住まいをどこにするかという問題に留まらず、どんな住まいを建てるかということにも、当然関連してきます。

かつてのニュータウン開発に関する説明は、要するに「売っておしまい」という開発がまかり通ってきた時代の話。「IKUMACHI吉川美南」は大和ハウスグループなど様々な人たちがアイデアを出して、今後の街づくりとその運営を行っていくといいます。

大和ハウスがこれからどのように取り組んでいくのか注目されますが、一定の安心感はあるように思います。また、「子育て」への配慮がある街は、高齢者にとっても住みやすいといえますから、その点でも街のポテンシャルは高いとも思われます。ただ、私は皆さんにはこのような長期的な視点も持って住まいづくり、街選びを行って頂きたいと思います。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます