昨年10月末、私はあるご縁があってオーストラリアの住宅事情について現地に赴き、取材をする機会がありました。そこで、現地の住まいのあり方や建築のスタイルなどを紹介します。住まいは、それぞれの国の伝統や文化が反映されるもの。海外の状況を知っていただくことにも、皆さんが今後、住宅取得を目指す上で参考になること、「だから日本の住宅はこうなんだ」という気づきがあると思われます。

海外の人たちは日本人より良い住宅に住んでいる?

私たちは一般的に、海外の人たち、特に西欧諸国の人たちは日本より優れた住環境、広くて快適な住まいで生活しているのではないか。さらに、もしかしたら私たち日本人よりも容易に住宅を取得できるのではないか、と思われているかもしれません。

オペラハウス

シドニーを代表する観光名所「オペラハウス」。ここを訪れると、オーストラリアが世界各国から移民を受け入れている多民族国家であることがわかる。様々な肌の色をした人たちが集まる、「幸せな場所」という雰囲気だった(クリックすると拡大します)

現実にはそうではなく、それぞれの国の人たちが住宅について、多少の違いがあるにせよ苦労を抱えているようです。より良いマイホームを持ちたいということは「夢」であることに変わりはないのです。この記事を最後まで読んでいただくと、むしろ日本人って「住」の分野では恵まれている、と感じるのではないでしょうか。

さて、ではオーストラリアという国の住宅事情はどのような感じなのか、まずご紹介します。基本的な事項ですが、オーストラリアは世界第6位の国土面積約769万平方キロメートルを有します。人口は約2100万人(2011年)と日本の約1/6分ですが、移民政策をとっており、人口が増加傾向にあります。

GDPは1兆4882億ドルで世界13位(同)と先進国の一つでもあります。中国人を中心とした外国人による投資が盛んで、そのせいで物価や住宅価格も上昇傾向。私の印象では物価は日本より1割くらい高いという印象でした。

年間の住宅着工を比べると、オーストラリアは20万戸程度で、100万戸規模の日本と比べると1/5程度です。ただ、人口増加に伴い増加傾向にとなっており、ほとんどの住宅がツーバイフォー工法で建てられています。

庶民が住むのは一般的には平屋建て。2階建て住宅もあることはありますが、平屋建ての方が圧倒的に多いのが現状です。間取りは「田の字型」の配置で、廊下があってLDK、寝室が2~3室、ビルトインガレージ、という構成となっています。

日本の高度経済成長期の住まいというイメージ

お国柄を表しているのが、どの住宅にもBBQをするためのスペースがあること。これは毎週末、家族や友人たちとパーティをするため。これは戸建てだけでなくマンションにも必ずあります。ちなみに、BBQをするのは現地では必須で、これを怠ると離婚の原因になるそうです。

住宅内部

ある分譲住宅の内部の様子。リビングの向こうには、現地の住宅には必須のBBQをするスペースが設けられていた。なお、この建物は日系のハウスメーカーによるもので、品質などに高い配慮がみられた(クリックすると拡大します)

このほか外観はレンガ貼りがほとんど。これはイギリスの住宅の影響を強く受けているためで、日本のようにサイディング外壁などがあって、多様な外観バリエーションがあるというわけではありませんでした。

私が受けた印象では、全体的には日本の高度成長期の住まい、という感じ。同じような建物ばかりで、住まい方の提案はもちろんのこと、設備なども工夫が感じられないものがほとんどでした。驚くことに、それはオーストラリアの経済の中心地・シドニーのど真ん中に建つ高級コンドミニアム(マンション)でも状況はあまり変わらないものでした。

例えば電気のスイッチ。オージー(オーストラリア人の愛称)は大柄で手の大きい人が多いわけですが、小指くらいのスイッチの大きさが新築住宅でも普通に採用されていました。日本は今や温水洗浄便座が一般的ですが、そうしたものはほぼ見かけませんでした。

広大な国土に少ない人口、そして先進国。こう考えると、オーストラリア人ってさぞかし良い暮らしをしていると考えがちです。しかし、オーストラリアの一般的な人たちは、日本などとあまり変わらない規模の建物や敷地で暮らしており、むしろ住宅そのものは日本の方がむしろ良いものが性能や品質が良いくらいでした。

では、なぜそうなっているのかについて、次のページでご紹介し、さらに皆さんにとって住まいに対する気づきになると思われることを書いていきます。