LP時代有終の美を飾るに相応しい美しさを放ったアルバム

■アルバム名
サザン・アクセンツ

■バンド名
トム・ぺティ&ザ・ハートブレーカーズ

■おすすめ理由
来日経験が乏しいことと、楽曲やバンドイメージが合わないせいもあるのか?日本での人気はいま一つ。それでも本国では不動の地位にあり、アリーナ・クラスの会場を埋め尽くすアメリカン・バンドの典型、それがトム・ぺティ&ザ・ハートブレーカーズです。

CD時代へと丁度入れ替わる頃合いの85年、このアルバムのデザインはLP時代有終の美を飾るに相応しい美しさを放ちました。
A面B面、Side1,2などという死語も、まだCDのブックレットに残されています。
洋楽を鑑賞する優雅な趣味が生きていた、あの頃の想いへと馳せることでしょう。

爽快な8ビートのロック「反逆者」、マイルス・デイビスの「On The Corner」を彷彿させるようなファンク・ロック「ナッシン・トゥ・ミー」、トム・ぺティ流サイケデリックの「ドント・カム・アラウンド」では、シタールによるインド音楽風な響きが全体を上手く統一させ、それらの技術力の高さに驚かされます。
プロデュースには、ユーリズミックスのデイヴ・スチュアートとザ・バンドのロビー・ロバートソンの2名が参加する豪華さ、しかしその甲斐も空しく、当時のファンの間では賛否両論だったと言います。
彼らにしてはあまりにもカラフル過ぎたのです。

このアルバムのタイトル曲「サザン・アクセンツ」は、シンプルな歌詞ながら、この人らしい奥深さが込められています。
「ほんの束の間、彼女はそこに立っていた」という下りに、この曲の生命みたいなものを感じます。

ほのかに残る薫り、懐かしさと別れの切なさ、
その場所には命が在った。
自分も立っていた、一緒に……。

実質は「個」というキーワードがあります。
ストリングスの重奏さと哀愁あるピアノの旋律によって膨らむのは「アイデンティティーの確かさ」です。
南部に自分の懐を求めることで、個というものへの尊さを知ります。
トム・ぺティ個人の身に起きた事情がベースとなり、それをリスナー全体へ共有できるよう工夫されています。

星条旗は揺れども、意思は微動だにしない、自分が素のまますっくと立っている、時代を超えた今でさえ、彼らのステージは鳴り響いています。




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