儚い美しい世界を描いた、文学作品のような少女漫画
■作品名ポーの一族
■作者名
萩尾望都
■巻数
全5巻
■おすすめの理由
「ポーの一族」はシリーズとして別冊少女コミックに連載されたものです。
作者の「永遠にこどもであるこどもを描きたい」という想いから、吸血鬼という設定が生まれ、最初は短編が誕生しシリーズ化。
1976年に、第21回小学館漫画賞少年少女部門を受賞しています。
■あらすじ
1744年、幼いエドガーとメリーベルの兄妹は、複数の愛人を持つ貴族、エヴァンズ伯爵の子供だった。
母親である愛人の死後、エヴァンズ伯爵が二人を引き取ろうとして本妻の逆鱗に触れ、召使いの手により森に妹共々捨てられてしまう。
それを助けてくれたのが村の老女ハンナ・ポー。
しかし彼女はバンパネラ(吸血鬼)で、エドガーが吸血鬼の秘密の儀式を目撃しまったことで、20歳になったらバンパネラになることを強要されてしまう……。
澄んだ青い瞳が印象的なエドガー。
人間に戻りたいと永遠に叶わぬ願いを秘めて苦しむ彼は、常にシニカルで冷酷ですらあります。
でも妹思いだった性格は、人間の時のままで、メリーベルには深い愛情を献身的に注ぎます。
どんなに外見は若い少年でも、ちょっとした瞬間に人間ではなく「魔」がにじみ出てしまう……
そんなエドガーの哀しくも美しく幻想的なこと。
吸血鬼が恐ろしい悪鬼として描かれているのではなく、人間に戻りたいという悲哀、淋しさ、憧れが描かれているので、繊細な画風と相まって文学作品のような深い余韻を残します。
何度読んでもこの儚い美しい世界に入り込める……、
そんな魅力をたたえている作品です。