美しい沖縄の風景と音楽と踊りで心の移り行くさまを表現
『ナビィの恋』
■監督中江裕司
■主演
西田尚美、平良とみ
■DVD/Blu-ray販売元
バンダイビジュアル
■あらすじ
都会の喧騒に疲れ、生まれ故郷の沖縄県・粟国島に里帰りした東金城(あがりきんじょう)奈々子。
陽気な島民、優しい祖父母の恵達おじぃとナビィおばぁに迎えられ奈々子は癒される。そこへ風来坊の福之助も転がり込み、東金城家は賑やかに。
そんな中、奈々子はナビィおばぁの様子がおかしいことに気付く。60年前に島から追放されていた、おばぁの初恋の人サンラーが島に戻っていたのだ。東金城家はユタ(占い師)を呼んで大騒動となり……
■おすすめの理由
まず90年代のミュージカル邦画についてですが、いくつかの映画のデータベースで調べてみたところ純粋なものは二つしかないようです。
しかも個人的にはどちらもお勧めしたいと思える作品ではありませんでした。
そこで歌と踊りがベースとなっている作品を考えて、敢えてこちらの佳作を選ばせていただきました。ウィキペディアでも「ミュージカル的な」作品と紹介されています。
作品最大の魅力であり面白い点は、主人公はあくまで奈々子ですが、初恋の人との再会で激しく動揺する、ナビィおばぁの心の移り行くさま、その心象風景を、美しい沖縄の風景と音楽と踊りで紡ぎ出す表現の仕方、そしてそれによって織り成す人間ドラマです。
その軸となる歌が沖縄民謡『十九の春』。
さらにはアイルランド民謡、オペレッタから松田聖子まで。一見統一感がないように思えますが、実はナビィの心の変化が巧みに写し出されて作品のポイントになっています。
音楽には『ピアノ・レッスン』で有名な巨匠マイケル・ナイマンが参加したことで、沖縄感一色に染まらず程良く心地よいリズムを映画に与えます。
監督の中江裕司氏は京都出身ですが、沖縄在住で現在に至るまで沖縄を舞台とした映画を作り続けておられます。
本作においても沖縄への深い愛情がベースにあり、それが作品にしっかり反映されることで沖縄好きの方のみならずその魅力が伝わります。
また西田尚美さんは、作品終盤の山場で、持ち味の軽みと伸びやかさを本領発揮し、さすが日本屈指のコメディエンヌだと感心しました。その点で西田さんのファンにもお勧めの1作です。