映画/口コミでおすすめのドキュメンタリー映画(邦画)

魅力的な人間賛歌の視点で「水俣病」を描いた名作

新潟水俣病が発生した地域に生きる人々を追ったドキュメンタリー映画です。原点はこの公害病への告発。しかし声高な告発調をとらず、自然と共に生きる人々の豊かさや力強さを描くことで、人々の豊かな暮らしを奪った水俣病への怒りを深く印象付けています。映画史に残る名作と言われます。

投稿記事

国内外の名だたるドキュメンタリー映画祭でグランプリを受賞
『阿賀に生きる』

■監督
佐藤真

■DVD販売元
紀伊國屋書店

■おすすめの理由

本作は新潟県下越地方の阿賀野川流域に生きる人々を追った、92年のドキュメンタリー映画です。ここは、65年に新潟水俣病が発生した地域であり、作品の原点はこの公害病への告発です。

重い社会問題を描くドキュメンタリーは多くの場合、シリアスな内容をシリアスなまま描いてしまいがちです。

それ故に内容がいかに優れていても大半の人の目には止まらず、これはドキュメンタリーの抱える本質的な問題点です。

作品最大の魅力は、声高な告発調をとらず、自然と共に生きる人々(作品に登場するのは未認定患者のお年寄り方です)の心の豊かさ、人間的魅力、力強さを引き出したことにより、描き方の難点を見事にクリアした点にあります。

つまり人間賛歌の視点で描くことで、かえって人々の豊かな暮らしを奪った水俣病への怒りが観る者の心へ深く印象付けられます。

また作品の誕生には幸運も重なりました。地元出身で、水俣病の未認定患者の救済運動に奔走した旗野秀人氏が佐藤真監督の志に共感、全面協力しました。

人々をよく知る旗野氏の助言「人生の達人達の生活をありのまま撮って、笑えるドキュメンタリーにしましょう」により作品の方向性が定まりました。

そしてご老人方との信頼関係が生まれ、伸び伸びとユーモラスな姿さえカメラに収めることができました。

その結果本作は非常に高い評価を受けました。

ドキュメンタリー映画としては異例の全国劇場公開がされ、また国内外の名だたるドキュメンタリー映画祭でグランプリを軒並み受賞するなど、ドキュメンタリー映画史に残る名作と言われます。

全国上映の際、自らの人生と風土を見直したい、といった感想と賛辞が多く寄せられ一大ブームを巻き起こしました。

1本の映画として名作ですし、DVD化もされており、普段ドキュメンタリー映画をご覧にならない方にもぜひ1度ご鑑賞願いたい、お勧めの作品です。

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