社会的差別の中、夢を決してあきらめない主人公
『ガタカ』(Gattaca)
■監督アンドリュー・ニコル
■主演
イーサン・ホーク、ジュード・ロウ
■DVD/Blu-ray発売元
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
■あらすじ
近未来の地球。人々は、遺伝子操作により劣性遺伝子を取り除き優れた知能・体力・外見を持った「適正者」と、欠陥のある可能性を持つ遺伝子のまま自然出産で生まれた「不適正者」に二分されていた。
厳格な社会的差別の中、不適正者として生まれたビンセントだがいつか宇宙飛行士になるのを夢見ていた。適正者の弟に遠泳で勝った彼は家を出る決心をする。
ビンセントはある日、適正者でありながら優秀さ故に悩み、自殺未遂の末下半身不随になった元水泳金メダル候補ユージーンをDNAブローカーに紹介される。
ビンセントは生活を保証する代わりに、ユージーンから生体IDを買い取り、生体偽装により彼になりすました結果、宇宙局「ガタカ」の局員となり……。
■おすすめの理由
本作は90年代ハリウッドSF映画、屈指の名作です。
作品最初の魅力は物語のリアルな設定です。現代は正に遺伝子研究の黎明期です。遺伝子操作技術の進歩は、難病治療などに光明をもたらす一方、どこまで人が介入するのか、倫理面で大きな問題を抱えています。
今はまだいくつかの病気のリスクが分かる程度ですが、数十年内にあらゆる遺伝情報がデータベース化され、出生前診断で遺伝子面での人としての限界が判明してしまうのは想像できるところです。
その時人々の意識にどんな変化が起きるか、ちょっと怖い感じがしますし、色々と考えさせられます。
作品最大の魅力は人間ドラマとして秀逸な点です。不適正者のビンセントはあらゆる社会的チャンスがない中、夢を決してあきらめません。その強い意志は周囲の人間を勇気づけ、皆に自分の本当の可能性について考えさせます。
ハンディを持つ者が逆境に負けず自分の可能性を追い求める物語はアメリカ映画の良き伝統で、それが無機質なSF内で描かれることでかえってビンセントの熱い思いが際立ちます。
またタイトルのスペルの内G、A、T、CがDNAの基本塩基の頭文字だったり、主人公の名前を訳すと克服し自由を得る者など、作品内に遺伝子や自由を象徴する記号が多くちりばめられている面白い魅力がある作品でもあります。